アジカン後藤正文のフジロック談義 音楽仲間と語り合うフェスの見どころ

今年の注目アーティストを語る

後藤:じゃあ、ここからは今年の楽しみなアーティストを挙げていきましょう。

小熊:ずっと洋楽の仕事をしてきた身としては、海外勢がこれだけ出演してくれるのが嬉しくて。そのなかで特に観たかったのがフォンテインズD.C.だったんですが、残念ながら出演キャンセル。ただ、その知らせと同時に、ブラック・カントリー・ニュー・ロードの出演が決まったのは嬉しかったです。今年2月リリースの最新アルバム『For the First Time』は多様なサウンドを呑み込んだアートロックの傑作でしたが、リリース直前にフロントマンが脱退。今回はオール新曲で臨むそうで、はたしてどんなライブになるのか。



後藤:僕はアーロ・パークスが楽しみです。彼女は南ロンドン出身のシンガーソングライターで、とにかく曲がいいんだよね。昨年出たアルバム『Collapsed in Sunbeams』の収録曲「Hurt」を聴いたとき、音楽に対するマナーが自分の好きなところと合致していると思ったんです。歌や演奏はオーガニックだけど、プロダクションは現代的。どこを取ってもいいなって。僕は、音楽家の身体性が見えてくる音楽が好きなんだけど、アーロ・パークスの音楽からも、彼女なりのしなやかさや柔軟性が伝わってくる。

矢島:私もアーロ・パークスがいちばん楽しみです。「Hurt」はめちゃくちゃいい曲ですよね。この曲、「痛みは永遠に続かないよ」といったことを繰り返し歌っているんですけど、コロナを経て戻ってきたフジロックでそういう言葉を歌われたらもう祝祭感がハンパないだろうなって。

後藤:そうだよね。



矢島:その一方で、国内勢もライブがいいアーティストを揃えていると思います。去年、出演を辞退された折坂悠太さんが今年あらためて出演というのもスマッシュとアーティストの信頼関係が見えるいいストーリーだと思いますが、個人的には小袋成彬さんに期待。小袋さんはいまロンドンを拠点に活動していますが、今年の夏は3年ぶりの日本ツアーを行なったばかりで、そのツアーを経てのフジロック出演ということで、かなり仕上がった状態でのステージになるんじゃないかなと。彼がロンドンで手にしているものが自身の音源や宇多田ヒカルさんの作品でふんだんに発揮されていますけど、それがライブパフォーマンスではどう出てくるのかが楽しみです。




つやちゃん:小袋さんは2021年のアルバム『Strides』がめちゃくちゃよかったですよね。宇多田ヒカルさんの新作『BADモード』にもプロデューサーとして参加していましたけど、あのアルバムでも「PINK BLOOD」や「TIME」などリズムがキレッキレの曲は小袋さんの手がけたもので。やっぱり彼はリズム感覚がすごい。『Strides』ではそこに肉体的でダンサンブルなヴァイブスが加わって、色気が増しましたよね。以前よりもライブ向きの作品になったな、と感じました。

小熊:同じく『BADモード』に参加していたフローティング・ポインツの周辺、ロンドンの音楽シーンでもかなり濃いところと絡んでいるそうですね。そのロンドン感がライブでどう表現されるのかも楽しみです。彼が出る3日目(7月31日)は、トム・ミッシュ、ムラ・マサというイギリスにおけるR&B〜エレクトロニックミュージックの現在を代表するアーティストも出演。その並びもいいですよね。




つやちゃん:私が楽しみにしているのはジェイペグマフィアですね。ジャンルで無理矢理カテゴライズするとヒップホップの人なんですけど、作風がかなりオルタナティブでおもしろい。2018年に『Veteran』というアルバムでブレイクして、その作品はコラージュっぽいサウンドだったんですけど、徐々にポップさが増してきました。カロリー消費高めなステージでも有名で、感情が昂ぶるあまりラップを通り越して叫んじゃったりするんですよ。だから普段ラップを聴かない人でも楽しめるパフォーマンスになると思います。



後藤:かっこいいし、変ですよね。なんか掴みどころのない感じがする。こういうラップ系のアーティストは、一昔前だとフジという感じではなかったけど、近年はWHITE STAGEにPUNPEEが出たりとか(2017年)、もう垣根がなくなってきている。僕はそういうのがすごくいいと思うんですよね。

つやちゃん:フェスならではの出会いというか、普段聴かない音楽を知れますもんね。

後藤:本当に。別にジャンルで分ける必要はないと思うし、並列にいろいろなものを観れたほうが楽しいですよね。さらにフジロックには、日本と欧米だけではなく、いろんな国や地域の音楽家も出演するわけで。

小熊:韓国ギターポップのSay Sue Me、台湾マスロックのElephant Gymも今年いいアルバムを発表したばかり。




つやちゃん:インドのブラッディウッド、モンゴルのThe HUはメタルバンドですね。

後藤:メタル、流行ってんの?(笑)。ただ同じメタルでも、各自の地域性みたいなのが出るところがおもしろい。それにしてもフジロック、楽しみです。徐々にコロナ以前の雰囲気が戻ってくるといいな。お酒を飲んだり美味しいものを食べたり、あとは友と語らうみたいなのもすごく大事なこと。最近読んでいるフィールド・レコーディングの本によると、人間は音を皮膚で感じているところも多いそうです。耳には聞こえない周波数の音で皮膚が震えたりというのは幸福感に繋がるみたい。そういうことを感じられる場が戻ってきているのは喜ばしいですね。






FUJI ROCK FESTIVAL ’22
2022年7月29日(金)〜31日(日)
新潟県 苗場スキー場
公式サイト:https://www.fujirockfestival.com/


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Spotifyで配信中、毎週水曜日18時に新しいエピソードを公開
番組リンク:https://open.spotify.com/show/6dkTPluL6El48dHAc8eVXp


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『プラネットフォークス』
発売中
特設サイト:https://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/AKG/PlanetFolks/

Tour 2022「プラネットフォークス」
9月30日(金)11月19日(土)
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