ペール・ウェーヴスが変化し続ける理由「インディじゃなくてオルタナティブになりたい」

ペール・ウェーヴス(Photo by Pip)

 
なんて自信に満ちているのだろう。「他人が言うことを前よりも気にしなくなった」と断言するペール・ウェーヴス(Pale Waves)のヘザーは、やりたいことを自由にやった結果、今メンバーとともにこれまでで最もパワフルなロックを奏でている。ドライブするラウドなギターに導かれる最新作『Unwanted』に驚いたリスナーも多いに違いない。その音楽は、Dirty Hitと契約しThe 1975のマシュー・ヒーリーやジョージ・ダニエルのプロデュースのもと話題をさらったインディ・シンセポップ風の1st『My Mind Makes Noises』とも、2000年代SSW風をベースにした2nd『Who Am I?』とも、異なるアプローチで堂々と鳴っている。

ペール・ウェーヴスの個性とは、変化を厭わず型にはまらず、自分たちの新たなフィーリングに向き合い続ける点にある。ゆえに、マンチェスター出身ながらアメリカのロックからの影響を隠さないし、インディ出身ながら直球のポップネスを志向することにも迷いがない。もしかするとそれは、もっと捻じれたマインドを持っていた一昔前のロックバンドにはあまり見られなかった傾向かもしれない。ペール・ウェーヴスはまっすぐで、ある種そのピュアさは今のロックバンドらしくもあるだろう。ロックがロックの呪縛から逃れフラットに鳴る時代の象徴として、『Unwanted』はどのような背景があって生み落とされることになったのか? 秋には日本での4公演も予定しているバンドの中心人物、ヘザー・バロン・グレイシー(Vo)に話を訊いた。



―ニューアルバムで、さらにパワフルになったサウンドに驚きました。完成した今の心境はいかがでしょう。

ヘザー:すごく興奮してる! もちろん緊張もしてるけどね。やっぱり音源をリリースする時は、みんなが気に入ってくれるかなって心配にもなるし。でも、今回はそういった緊張や心配を超えてすごくワクワクを感じている。このレコードを作ったこと、込めたメッセージについて誇りに思っているし、自信があるから。

―前作はパンデミック初期で、LAでレコーディングしながらもメンバーが途中帰国されたりと大変な時期だったかと思います。今作はレコーディング含めてスムーズにいきましたか?

ヘザー:今回は、本当にスムーズだった。たぶん、レコーディングをここまで楽しめたのは初めてなんじゃないかな。ストレスが全然なくて、かなり自然だったんだよね。メンバー全員が同じものを求めていたし、それを理解していたから楽だった。4人ともにここまで認識が一致した状態でアルバムを作ったのは初めてで、本当に良かったと思う。

―今回、プロデューサーはマシン・ガン・ケリーやウィローを手がけたザック・セルヴィーニですね。どういった経緯でザックと組むことになったのでしょうか。

ヘザー:オール・タイム・ロウとコラボした曲「PMA」のプロデューサーがザックだったんだよね。その時に彼と一緒にスタジオに入ってレコーディングしたんだけど、作業を始めた瞬間、ペール・ウェーヴスのサウンドとの相性が最高で次のアルバムのプロデュースを頼むなら絶対に彼だと確信した。彼は私たちがこのレコードでどんなサウンドを作りたいか、何がしたいかという方向性をしっかりと理解してくれたし、それを尊重しつつ彼独自のサウンドをもたらしてくれた。プロデューサーが彼じゃなかったら、今回のようなアルバムは出来なかったと思う。




―マンチェスター出身のバンドがここまでアメリカ寄りのサウンドを志向する点に、面白さと時代の変化を感じています。自国以外の音楽性を貪欲に吸収し表現しているミュージシャンは近年多いように思いますが、ペール・ウェーヴスにとってそれは自然なことなのでしょうか。

ヘザー:そうだと思う。私たちは、自分たちが良いと思う音楽全てから影響を受けているから。あとはやっぱり、ザックとLAで作業したというのもアメリカっぽさがある理由の一つかもね。プロデュースだけじゃなく、アルバムを書いたのもレコーディングしたのもアメリカだったから。

―過去の作品も含めて、マンチェスターっぽいサウンドやイギリスっぽいサウンドを作ろうと意識したことは一度もないですか?

ヘザー:うん、それはないと思う。私はイギリスっぽいサウンドがむしろ好きじゃない時ですらあって。時に、インディっぽすぎる時があるでしょう? 私はインディじゃなくて、どちらかといえばオルタナティブ・バンドになりたいから。それに、パラモアだったりアヴリル・ラヴィーンだったり、私たちが好きで聴いてきた曲のほとんどはアメリカの音楽。だから、アメリカの音楽からインスピレーションを受けたサウンドが出来上がるのは自然なことなんだよね。

―逆に、マンチェスターらしさを自分たちに感じることはありますか?

ヘザー:私たちの性格がすごくマンチェスターっぽいと思う。すごくはっきりしていて寛大。あとすごく情熱的でもある。サウンドが典型的なマンチェスター・サウンドに聴こえないとしても、私たちはアティチュードとかパーソナリティが典型的なマンチェスター・ピープルなんだよね。

Translated by Miho Haraguchi

 
 
 
 

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