テイラー・スウィフト『Midnights』 深い夜の世界へいざなう最新作を徹底レビュー

「過去の自分」を掘り下げながら見つけたもの

『Midnights』収録曲の大半は、恋人同士の仲が深まるにつれてふたりが直面する不安や障害に鋭い焦点を当てている。「Maroon」と「Labyrinth」が失われた愛をストレートに歌っているのに対し、「Question…?」は「Delicate」を思わせる、弾けるようなポップチューンだ。この曲でテイラーは、もっと努力すればよかったと後悔することはある?と別れた恋人に問いかける。「Bejeweled」では、相手を手中に収めたテイラーが自らを最高の栄誉として相手に捧げる。



『Midnights』の収録曲の中で唯一心残りだったのがラナ・デル・レイとのコラボレーション曲「Snow on The Beach」。正真正銘のデュエットというよりは、単なるユニゾンに終わってしまったのは残念だった。曲自体は靄に包まれているように幻想的で、「mirrorball」に夢のような冬の風景とジャネット・ジャクソンの要素を合わせた印象を与える。テイラー・スウィフトとラナ・デル・レイという、ふたりの素晴らしいシンガーのコラボレーションがこれで最後にならないことを願うばかりだ。

アルバムのラストを飾るのは「Mastermind」。この曲でテイラーは、自ら“首謀者”と名乗り、相手を“落とす”ための入念に練られた計画を明かす(この曲の歌詞は、匂わせ上手なテイラー自身の“謎めいた権謀術数”に通じるものがある)。こうした計画によって“落とされた”と言われている恋人との共作であるしっとりしたラブソング「Sweet Nothing」からのつながりも見事だ。

過去アルバムの再レコーディングというプロジェクトに取りかかるにあたり、テイラーは自らのアーカイブを再訪した。過去の自分を掘り下げることで、ソングライティング中に鮮やかで爽快な何かが生まれたことは間違いないだろう。『folklore』や『evermore』といった近年の作品を通じてテイラーのファンになった人は、『Midnight』を聴いて驚くかもしれない。だが、混じり気のない“ポップな”過去アルバムがそうであるように、シンセサイザーが奏でる青紫色の靄の下を掘り下げれば掘り下げるほど、新たな発見に出会えるはずだ。きっとこれも、テイラーの策略の一部なのかもしれない。

From Rolling Stone US.




テイラー・スウィフト
『ミッドナイツ / Midnights』
再生・購入:https://umj.lnk.to/taylorswift-midnights

日本盤CD:10月26日 4形態同時発売
 『ミッドナイツ:ムーンストーン・ブルー・エディション』
 『ミッドナイツ:ジェイド・グリーン・エディション』
 『ミッドナイツ:ブラッド・ムーン・エディション』
 『ミッドナイツ:マホガニー・エディション』

日本公式ページ:https://www.universal-music.co.jp/taylor-swift/

Translated by Shoko Natori

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