追悼テイクオフ 「史上最大のグループ」ミーゴスのラップ革命と故人の偉業を振り返る

ミーゴスの二次ブレイク、テイクオフのソロ作に見る才能の片鱗

ミーゴスのブレイクに伴う三連フロウの浸透は凄まじく、2014年に発表したミックステープ『No Label II』の冒頭を飾る「Intro No Label II」でもテイクオフがそのことに言及している。さらに2曲目は「Copy Me」というストレートなタイトルを冠し、グループ全員でそれをテーマに据えた。なお、「Copy Me」で「お前らは俺のフロウを盗んでいるってわかっているんだろ」と迫るフックを担当したのもテイクオフだ。グループの中の誰が三連フロウに最初に挑んだのかは不明だが、これらの曲でのテイクオフのリリックからはオリジネイターとしての自負が強く感じられる。



その後もオフセットの再びの逮捕などマイナスなトピックもあったものの、クエイヴォとテイクオフの二人でその人気を保持。2015年にはシングル「Look At My Dab」をリリースし、アトランタに根付く「ダブ」と呼ばれるダンスの振り付けの流行に貢献した。そして2016年にはシングル「Bad and Boujee」が14週連続でチャートのトップ10に残る大ヒットを記録。勢いに乗って2017年にリリースしたアルバム『Culture』も成功し、ミーゴスはさらなるステップアップを果たした。




この頃にはオフセットが詰め込み気味でシャープなフロウ巧者としての才能を本格的に開花させており、それまでメロディアスなアプローチも得意なクエイヴォがグループ内での一番人気だった状況が『Culture』を機に少し変化した。そのため、テイクオフ個人に限っては『Culture』での二次ブレイク後もほかの二人ほど単独での客演数の増加は起きなかった。「Bad and Boujee」にテイクオフが不参加だったことも災いしたのだろう。しかし、それでも2018年にはグッチ・メインが「テイクオフは今の俺のお気に入りのラッパー」とInstagramでシャウトアウトを送るなど、ドスの効いた迫力の低い声質と安定したフロウを持つそのラップへのファンはしっかりと着いていた。

テイクオフにとって唯一のソロ作となった2018年の『The Last Rocket』はミーゴスと少し異なるスペイシーな音使いが目立ち、独自の路線を追及する姿勢を見せていた。トラップから離れたスムース&ダンサブルな「Infatuation」はミーゴスにはないタイプの曲で、クエイヴォとオフセットのソロ作でも聴けないテイクオフだけが持つセンスだ。また、未だにリリースされていないものの、リル・ヨッティやCarnageとのコラボ作の制作も報じられていた。未発表のラップが今後リリースされる可能性はあるものの、テイクオフが持っていたミーゴスとは違うセンスでまとめ上げられた作品をもう聴くことができないのは残念でならない。



ミーゴスがいたからこそ現在の音楽シーンがある

アトランタのシーンが育んだ音楽性を発展させつつ、三人で同じスタイルのフロウを使うことにより集団の力でヒップホップに大きな変革をもたらしたミーゴス。二次ブレイクの際には一人置いて行かれるような状態になったものの、その初期の活動を支えたテイクオフの存在はなくてはならないものだった。もしテイクオフがいなかったらオフセット不在時にミーゴスの名前はシーンに残らず、「Versace」の一発屋になったか、クエイヴォだけがソロで人気を集めていたかもしれない。Murda BeatzやBuddah Blessのように、ミーゴス作品をきっかけにステップアップしていったプロデューサーの活躍もなかっただろう。カーディ・Bやポスト・マローンも、ミーゴス(のメンバー)との共演曲でヒットを重ねて現在の地位を固めたアーティストだ。トラップの人気もミーゴスあってのものだろう。ミーゴスが常にヒップホップの第一線で活躍していたからこそ、現在の音楽シーンがあるのだ。

また、2017年にはヒップホップ/R&Bが全米で最も聴かれている音楽ジャンルになったことが報じられたが、この2017年というのは「Bad and Boujee」の大ヒットと重なる時期だ。ヒップホップ/R&Bの市場規模の拡大という点でもミーゴスの功績は大きなものがあると言えるだろう。ヒップホップのフロウを変えてセールスを伸ばしたミーゴスは、オフセットが言うように紛れもなく「史上最大のグループ」なのだ。改めてその偉業を称え、テイクオフに追悼の意を捧げたい。

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