被害者の顔を食いちぎった殺人犯、「獣人」の兆候が見られると主張 米

2016年10月、2件の殺人罪で逮捕されたオースティン・ハルフ被告(Photo by MARTIN COUNTY SHERIFF'S OFFICE/AP PHOTO)

2016年、2人を殺害し、そのうち1人の顔を食べたとされる米フロリダ州の元大学生、オースティン・ハルフ被告が、心神喪失を理由に無罪抗弁を認められた。殺人罪の公判が始まる直前になって、司法取引が認められたためだとCBSニュースが報じている。今回の抗弁でハルフ被告は禁固刑を免れる代わりに、厳重警備の精神病院に送られる。

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現在25歳のハルフ被告は、ジョンさんとミシェルさんのミシュコン・スティーヴンス夫妻を殺害し、隣人に重傷を負わせたとして、2件の第1級殺人罪と余罪に問われていた。無差別と見られるおぞましい犯行が行われたのは2016年8月で、ハルフ被告は当時19歳だった。

事件についてハルフ被告の弁護団と検察は陪審裁判を放棄することで同意し、代わりにハルフ被告の法的責任能力について判事に判断を委ねた。新型コロナウイルスの影響や、犯行時に被告が化学薬品を飲用して消化器官がほぼ完全に破壊されたために回復に時間がかかるなど、裁判は何度となく延期されてきたが、現地時間11月28日、ようやく公判開始を迎え、この後3週間続くと見られていた。だが土壇場になって司法取引が成立し、開廷直前で公判手続きが停止された。

「オースティン・ハルフ被告の事件が心神喪失による責任無能力の抗弁で終わったことで、犠牲者の遺族に慰みをもたらすことはできませんが、このような結果により本件は法にのっとったしかるべき結末を迎えることができました」。被告弁護団の1人、ネリー・L・キング氏はこう述べ、さらにこう続けた。「フロリダ州では、依頼人の責任無能力を証明するのは非常に荷が重く、明白かつ納得できる証拠が必要です。ですが今回は、事実と証拠が結果を立証しています。オースティンがフラッカや通称『バスソルト』と呼ばれる麻薬を摂取したのが原因で殺人にいたったとする州側の主張は、再三にわたって間違いであることが証明されました。弁護側の専門家が反証しただけでなく、州も2カ所の薬物検査機関に3度サンプルを送りましたが、結果はいずれも陰性でした」

ローリングストーン誌はブランドン・ホワイト検事にコメントを求めたが、すぐに返答は得られなかった。

今回の抗弁でハルフ被告は禁固刑を免れる代わりに、厳重警備の精神病院に送られ、そこで余生を送ることになる。この先判事や医師が、もはや危険人物ではないと判断して被告の釈放に同意する可能性もあるが、マイアミ大学法学部のクレイグ・トロシノ教授も以前述べたように、事件の残忍さを考えるとその可能性は「極めて低い」だろう。

公判に先立ち、検察と弁護団が用意した精神疾患の専門家はいずれも、犯行時のハルフ被告には急性精神疾患の症状が現れていたと結論づけた。被告弁護団が雇った医師は、被告には「臨床狼化妄想」の兆候があった、つまり自分が「狼人間」だと思い込んでいた可能性があるとまで主張した。

ショッキングな事件ゆえ、当時はハルフ被告がフラッカやバスソルトなどの麻薬の影響下にあったのではないかという疑問も持ち上がった(後者は2012年にも、フロリダで起きた別の顔面食いちぎり事件で関連性が取り沙汰された)。だが逮捕後に行なわれた被告の薬物検査の報告書には、麻薬の痕跡は一切見つからなかった。

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from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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