会場内に入ると、ドラムセット3台がずらりと横に並び、頭上にミラーボールが輝くインパクト大のステージがまず目に飛び込んでくる。そのステージ後方に設置されたブースでの社長(SOIL &“PIMP”SESSIONS)によるDJプレイを経て、ライブはkiki vivi lilyからスタート。「AM0:52」で甘さとエモーションの同居した歌声を聴かせると、「Blue in Green」ではサックスのMELRAWと掛け合いを見せ、ライブアレンジされた「Waste No Time」ではバンドメンバーによるソロ回しから手拍子でオーディエンスとの一体感を生み出していく。最後に「80denier」をしっとりと届け、イベントのトップバッターを堂々務め上げた。
ここでバンドの演奏は一休み。DJブースにPhennel Koliander、dhrma、Ballheadの3人のビートメーカーが登場して、「Table Beats Session」がスタートした。これは彼らがJazzy Sport Kyotoで不定期配信しているビートライブプログラム「Table Beats」のリアル版といった感じで、3人はSP-404を使い、それぞれ体を揺らしながらヒップホップを軸にドープなビートを次々と繰り出して、ホール内を深夜のクラブへと塗り替えた。2000年代初頭からクラブジャズとライブシーンを繋ぐ存在だったソイルの社長、同じく2000年代初頭からヒップホップを軸に幅広いダンスミュージックを世に送り出したJazzy Sport。2010年代から活動し、ジャズとヒップホップのクロスオーバーをこの国のオーバーグラウンドにまで広めたWONKのイベントにこの両者が関わるということ自体、非常に意味があることだと言える。
WONK(Photo by Kosuke Ito)
長塚健斗(WONK)(Photo by Kosuke Ito)
井上幹(WONK)(Photo by Kosuke Ito)
続いて登場したWONKのこの日のモードは非常に明確で、2015年発表のデビュー作『From the Inheritance』から「Feelin’ You(Y.N.K)」と「ido」、同じく2016年に発表され、WONKの存在をシーンに知らしめた『Sphere』から、ゲストとして迎えられたトランぺッター・Patriq Moodyをフィーチャーした「RdNet」という初期曲3曲を披露。コロナ禍の混沌を映し出すかのようなSF大作『EYES』を経て、最新作『artless』では原点となる「4人での演奏」に回帰した今年のWONKのモードを象徴する選曲であり、とりわけ荒田洸が水を得た魚のように硬軟自在のプレイを繰り出していたのがとても印象的。「RdNet」の後半ではメンバー全員で熱量の高いセッションが繰り広げられたが、この日の会場である人見記念講堂が大学内の施設であることを思うと、もともと大学のサークルを通じて出会った彼らは、当時からこんな風に日々セッションを繰り返していたのかもしれない。