ブルー・ラブ・ビーツが語るアフロビーツの真髄、文化の「盗用」と「リスペクト」の違い

 
ガーナで学んだアフロビーツの真髄

―今、日本でもアフロビーツは人気が出てきていて、もっと聴きたいという人、自分でトラックを作りたいという人も増えています。

NK-OK:そうなんだ。日本のプロデューサーがアフロビートを作るための最もいい方法は、ガーナやナイジェリアのプロデューサーにコントタクトをとって、彼らとコラボレーションをすることなんじゃないかな。例えば、イギリス人でアニメ好きな人なら日本人とコラボレーションすることがベストなのと一緒。そう考えたらわかりやすいよね。

―『Motherland Journey』の制作でガーナにも行ったんですよね。実際に現地のプロデューサーとコラボしたことで気付いたことはありますか?

NK-OK:すごかったのはパーカッションの使い方だね。

Mr DM:(タイトル曲では)ガーナのキルビーツ(KillBeatz)とコラボしていて、彼がプログラミングの多くを手掛けているんだ。僕らも少しはやっているけど、彼が作ったサウンドはあまりに素晴らしかった。

NK-OK:そもそもサンプリングのやり方も違うんだ。UKにもアフロビーツのプロデューサーはいて、彼らはナイジェリアやガーナにルーツを持っているんだけど、やっぱり現地でやってるプロデューサーに会って、オリジナルのソースに近づくと全然違うんだよね。例えば、キルビーツはスタジオのその辺に置いてあったガラスの瓶を使ってみたり、ミントのキャンディーが入っているポットを使ってみたりしていて、自分たちの周囲の環境にあるものはすべて音楽になるって感じだった。そういう手法によってテクスチャーがオーガニックなものになるし、すごくハートに響くんだよね。

Mr DM:高価なスタジオを使えばいいってわけじゃないんだよね。



―プロダクションの部分でも何か発見はありましたか?

NK-OK:キルビーツの音楽って、クオンタイズされてて整っている部分もあるんだけど、ある部分はライブ・パーカッションになっていて、かなりレイドバックしていたりするんだ。J・ディラ的なヒップホップのセンスに近い部分もある感じで、かなり自由さを残している。シャバカ・ハッチングスが言うところの「彼らはグリッドの曲げ方を知っている」ってこと。そうすることでリズムがより自然でオーガニックなものになる。ドラムのキックとリムショットはクオンタイズするんだけど、それ以外のパーカッションはライブの生の感じをそのまま使っていたり、そういうコンビネーションが面白かったよ。


キルビーツのスタジオセッション映像(2011年)

―ブルー・ラブ・ビーツはそこに生演奏を加えますよね。アフロビーツらしい生演奏の部分に関してはどうですか?

Mr DM:例えば、コード進行ひとつをとってもアフロビーツに取り組んだことで学べたことは多いよ。すごくシンプルに聴こえるんだけど、実際に演奏してみると難しかった。例えば、バーナ・ボーイの「Ye」はシンプルで、あの曲がかかるとみんな楽しそうに踊り出すわけだけど、演奏する方はすごく難しいんだ。一見簡単そうなんだけどね。ウィズキッドの「Essence」もものすごくシンプルなんだけど、聴く人を飛び上がらせる何かがあるんだよね。「Essence」にはたった2つのコードしかないんだ。でも、あのリズムの上で、エモーションやフィーリングをたった2つのコードで表現するのはかなり難しい。

NK-OK:リズム面でいうと、アフロビーツはどこに4拍目を置くかの考え方が、僕らにとっての普通の位置じゃないんだよね。キックとリムショットの1小節がループされているだけだから、基本的にはシンプルなんだけど、その4拍目の位置が違うから四つ打ちとは違う感覚でやらなきゃいけない。その4拍目のタイミングによって、音楽のすべてが変わってくるんだ。例えば、ボーカルはそのリズムに乗っかってるから、すべてに関わっている。でも、パーカッションに関してはリムショットとは役割が違っていて、キックとスネアのメインのリズムにとってのベッドみたいな感じで敷かれている。面白いよね。



Translated by Kyoko Maruyama

 
 
 
 

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