My Little Loverの2年ぶりビルボード公演、色褪せない楽曲と真摯なメッセージ

My Little Loverのakko(Photo by Masanori Naruse)

 
My Little Loverのakkoが1月23日、東京・Billboard Live TOKYOにて『My Little Lover ☆ acoakko live winter quartet』を開催した。

【画像を見る】『My Little Lover ☆ acoakko live winter quartet』ライブ写真(全7点)

本公演は、akkoが2006年から行なっているアコースティックライブ「acoakko」の最新版。これまでもMy Little Lover(以下マイラバ)の珠玉の名曲たちを、音数を絞り込んだアコースティックかつオーガニックなアレンジで披露してきた人気企画である。同会場では2020年11月、デビュー25周年のアニバーサリーライブもこの名義で行われており、それからおよそ2年ぶりのステージとなる。なお、本公演に先がけ1月17日(火)には大阪・Billboard Live OSAKAでのライブも行われた。

筆者が見たのは、この日20時半よりスタートした2ndステージ。今回のサポートメンバーは、EXILE TAKAHIROや坂本真綾、DREAMS COME TRUEなど様々なアーティストのライブやレコーディングに携わってきた扇谷研人(ピアノ)、秦基博や元ちとせらのサポートも務めた伊藤ハルトシ(ギター、チェロ)、そしてBank Bandのパーカッションも担当した経験のある藤井珠緒(パーカッション)という、「acoakko」としては初の編成である。


Photo by Masanori Naruse


Photo by Masanori Naruse

定刻となり、まずはマイラバ通算5枚目のアルバム『FANTASY』(2004年)の冒頭に収録されたタイトル曲から。流麗なピアノのイントロに導かれ、無垢で透明感あふれるakkoの歌が会場内に響き渡る。小林武史による、捻りの効いたコード進行と練り上げられたメロディラインは、このシンプルなアンサンブルだとより一層際立つ。続く「Shiny Shoe」も『FANTASY』収録曲。チェロからアコギに持ち替えた伊藤がリズミカルにコードをかき鳴らし、藤井のカホンが歩調を合わせると、客席からは自然発生的にハンドクラップが鳴り響く。akkoはグロッケンシュピールを時おり叩きながら、まるでスキップするような軽やかなメロディを朗々と歌い上げた。

“信じられてたもの全てウソでも/時計の針は容赦なく進み続ける”と歌う「予感」は、akkoがマイラバをソロプロジェクトとして再開後、初めてリリースしたアルバム『akko』(2006年)に収録された楽曲だ。おそらく当時の彼女の心境を託したものだが、コロナ禍で様々な「喪失」を経験してきた私たちの心にもその歌詞は深く染み渡る。目まぐるしく転調を繰り返すかなり入り組んだ楽曲だが、そうとはあまり感じさせないのは、てらいのないakkoのボーカルスタイルによるところも大きいのだろう。


Photo by Masanori Naruse

オリジナルアレンジはピアノ主体だった「悲しみよ今日わ」(『FANTASY』収録曲)を、アコギをフィーチャーしたボサノヴァアレンジで聴かせた後、マイラバの隠れた名曲「スロウな恋」へ。これは、2002年にリリースされたセルフカバーアルバム『organic』に収録された唯一の未発表曲で、NHK BS2で放送されたテレビ番組『新・真夜中の王国』にも使用されていた。懐かしくもどこか寂しげなバロック調のメロディを、チェロのカウンターフレーズがそっと引き立てる。

そして、聴き慣れたイントロがアコギから爪弾かれると、場内が静かに沸き立つのを感じる。マイラバ最大のヒットとなった3rdシングル「Hello, Again 〜昔からある場所〜」だ。ジェンダーレスなakkoの声で歌われる、どこかスコティッシュ〜アイリッシュな空気を纏ったメロディは、この楽曲が収録された1stアルバム『evergreen』(1995年)のタイトルをそのまま体現しているかのよう。しかも、“泣かないことを誓ったまま時は過ぎ/痛む心に気が付かずに僕は一人になった”、“生きて行こうどこかでまためぐるよ/遠い昔からある場所”という歌詞は、リリースから30年近く経ちそこに込められた意味がより一層強く心に響く。

 
 
 
 

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