ジャクソン・ブラウン来日公演を目撃すべき8の理由

 
5. 最新作『ダウンヒル・フロム・エヴリホェア』の精神

ジャクソン・ブラウンは2020年にコロナ・ウィルスに感染。療養期間を終えてから、ソーシャル・ディスタンスを保ちつつ最新作『ダウンヒル・フロム・エヴリホェア』を仕上げた。実際はコロナ禍以前から少しずつ制作が進められていた作品だが、人種間の問題、民主主義の後退など、コロナ禍を経てより顕在化してきた世界の状況を予見したような内容になっている。

タイトル曲は2020年に公開された、プラスティック廃棄物による深刻な海洋汚染をテーマにしたドキュメンタリー『The Story Of Plastic』の予告編に使用された曲。真正面からメッセージを突きつけるタイプの曲と異なり、廃棄物の問題のみならず、アメリカをはじめとする先進国の問題が浮き彫りになってくる、想像力を刺激する歌詞が印象に残る。

この曲と共に来日公演で歌われそうな曲が、「アンティル・ジャスティス・イズ・リアル」。タイトルから想像するほど押し付けがましさはない。「正義が実現するまで踏ん張り続ける」と明言しながらも、聴き手には自分自身に問いかけてみることを促す。思考することを放棄したら何も変わらないのをわかってもらうために、噛んで含めるように語りかける曲だ。

「スティル・ルッキング・フォー・サムシング」は、聴けばすぐにジャクソンとわかる、メロディのみずみずしさがうれしい。歌詞を見ると、「孤独なランナー」の続編という感じもある。「何かを探し求める」という精神は一貫しているが、そこに「わけのわからないまま終わってしまいたくないよね」と添えられ、70代になったジャクソンの心境が滲んで見える。もう残された時間はそう長くない、という覚悟が本作に独特な緊張感を与えているようにも思う。






6. コロナ禍を挟んでようやく実現した久々の来日

2020年は予定されていたフジロックフェスティバルへの出演が幻となり、落胆したファンは多いはず。幸い、健康状態が戻ってからは再び勢力的にコンサートを行なっており、昨年敢行された「An Evening With Jackson Browne 2022」ツアーのセットリストを見ると、まさにキャリア集大成と言うべきバランスのよい選曲になっている。

古くからのファンに求められているイメージもよく理解しているジャクソンは、過去の人気曲を大事にしながら、今伝えたい最新作からの曲もうまく取り混ぜてセットリストを組んでいる。去年までの演奏曲目を見る限り、どのジェネレーションのファンが観ても失望させられることはまずないだろう。2015年3月のスタンディング・イン・ザ・ブリーチ・ツアーを収録した『ザ・ロード・イースト -ライヴ・イン・ジャパン-』で予習しておくと、近年のバンドセットの雰囲気が把握しやすいと思う。





7. 同世代の仲間たちとの相次ぐ別れ

クロスビー・スティルス&ナッシュの東京公演にジャクソン・ブラウンが飛び入りするというミラクルが起きたのは、早いものでもう8年も前のこと。ソロ・デビュー以前からジャクソン・ブラウンの才能を認めて励ましたローレル・キャニオン時代からの仲間であるデヴィッド・クロスビーは、今年1月に急逝してしまった。

続いて2月には長年活動を共にしてきたキーボード奏者で、『ダウンヒル・フロム・エヴリホェア』にも参加したジェフ・ヤングが他界。そして3月に入ってから、今度はジャクソンの作品に多大な貢献を果たしたギタリスト/マルチプレイヤー、デヴィッド・リンドレーの訃報が伝えられた。ここまで仲間の訃報が続くとは……ジャクソンのファンにとっても、彼自身にとっても、あまりにも辛い年だ。

2016年にはイーグルスのグレン・フライも鬼籍に入った。わずか10年足らずの間に亡くしてきた多くの仲間たちについて、恐らく日本のステージでもジャクソンから何らかのコメントや、場合によってはトリビュート的な演目もあり得るのでは、と想像する。厳しい時期にも歌い続けるジャクソンの姿を、しかと見届けたい。





8. 若手たちとの積極的なコラボレーション

今年の10月で75歳になるジャクソン・ブラウンだが、齢が離れた若手ミュージシャンとの交流も積極的に行なっている。その筆頭は、先述のフィービー・ブリジャーズ。「マイ・クリーヴランド・ハート」のプロモーションビデオにも看護師役で出演した彼女は、ジャクソンが自分でお金を払ってアルバムを買うほどのお気に入り。2ndアルバム『パニッシャー』(2020年)に収録されていた「Kyoto」にジャクソンのボーカルをフィーチャーした新バージョンを2021年にシングルとして配信したことも記憶に新しい。

以前から交流を続けているブレイク・ミルズとは、つい最近もPrime Videoで配信が始まったドラマ『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』に提供したコラボ曲「Silver Nail」(ジャクソン、ブレイク、キャス・マックームス、マット・スウィーニーの共作)がお披露目されたばかり。このドラマはテイラー・ジェンキンス・リードの小説を映像化したもので、フリートウッド・マックを思わせる架空のバンドの活躍を描いた内容が話題を呼んでいる。堅物っぽいジャクソンのイメージからすると意外なコラボだが、こんな形でも注目を集める2020年代のベテラン、この先もまだまだ我々を驚かせてくれそうだ。







ジャクソン・ブラウン ジャパンツアー2023
2023年3月20日(月)大阪・フェスティバルホール *Sold Out
2023年3月22日(水)広島・JMSアステールプラザ 大ホール
2023年3月24日(金)名古屋市公会堂
2023年3月27日(月)東京・Bunkamura オーチャードホール *Sold Out
2023年3月28日(火)東京・Bunkamura オーチャードホール *Sold Out
2023年3月30日(木)東京・Bunkamura オーチャードホール

■チケット(税込)
S席:¥14,000 A席:¥13,000

公演ページ:https://udo.jp/concert/JacksonBrowne2023



ジャクソン・ブラウン
『ダウンヒル・フロム・エヴリホェア』
発売中
再生・購入:https://JacksonBrowne.lnk.to/DownhillFromEverywhere

 
 
 
 

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