殺人現場の新名探偵は昆虫? 海外で活躍する「法医昆虫学」の世界

虫の生息地から殺害地域を特定し、容疑者のアリバイを崩す虫の科学

昆虫は事件現場において、「時間」だけではなく「場所」も教えてくれる。世界ではその土地の気温や環境に合わせて独自の生態系が確立されている。例えば人食い魚と表現されることの多いピラニアは主にアマゾン川など南アフリカの熱帯地方で見られる魚で、日本で野生のピラニアを見ることはできない。これはピラニアが同じ水域に群れでしか生息しないためである。こうした各地域に存在する独自の生態系は魚だけではなく昆虫も同様に存在している。法医昆虫学は地域における昆虫生態系の違いに関するデータを活用して殺害場所を特定していく。前述したように、虫は人間の死後、死体の中に入り込み成長することで遺体の腐敗を進める。つまり死体の中から発見された昆虫がその地域で生息しないものの場合、遺体は移動されたということになる。また昆虫は遺体の移動だけではなく、警察犬のように証拠品などから容疑者のアリバイを崩すこともできる。

実際の例をNBCニュースの記事を元に見てみよう。2003年米国で子ども3人を含む5人が銃殺され、遺体で発見された。事件当初、殺害された1人の女性と別居中であった男性が容疑者で浮上するも、事件当時は別の州に旅行していたアリバイが存在したことから証拠不十分で逮捕に至らなかった。事件から約1年後、当時容疑者が旅行先で使用したレンタカーのクーラー装置の中から、旅行先の州では生息せず、被害者の殺害現場となった州では生息する昆虫の死骸が発見された。この昆虫とレンタカーの走行距離が大きな証拠となり警察は容疑者を逮捕、裁判で死刑が言い渡された。またもや昆虫が事件の真犯人を見つけた瞬間であった。

昆虫達は自然の中で生きる力を使い、私達に殺害時間と場所を鮮明に映し出してくれる。米国ではこの「法医昆虫学」が1990年代から積極的に事件の証拠発見の希望として使用されてきた。日本では昆虫の生態系の研究不足から、現時点での殺害現場に置ける法医昆虫学の適用は難しいとされているが、遠くない未来、日本においても昆虫が殺害現場のスーパースターになる日がやってくるかもしれない。

関連記事:妻殺害の夫、息子のiPadでバラバラ死体の処理方法を検索 米

参照
Bugs and Insects Help Solve Crime: Forensic Entomology - YouTube
死体にわく虫で死因を解明?犯罪捜査に用いられる「法医昆虫学」とは?|健康・医療情報でQOLを高める~ヘルスプレス/HEALTH PRESS
Crime Scene Creatures | Case Files | Nature | PBS
The Mystery of the Lost Weekend (nbcnews.com)



Rolling Stone Japan 編集部

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