Nissyがドームで届けたポップスターの「親密さ」と新たなコミュニケーション

ストーリーテリングなステージ

二つ目のセクションでは、VTRと演出を交差させストーリーテリングなステージを創りあげていく。物語は「タイムパラドックスを誘発してしまうため、特定の時間軸で密接に人と関わることができない。規則に反しないためには、パートナーから自分の記憶を消さなければならない」といった内容だ。映像のなかでTHREEは「この時間軸に来て来年で10年になる」とも話しており、Nissyがソロ活動を始めた年数ともリンク(ツアー開始時は、2022年だったため)。それはまるで、すべてをリセットしたかのように引き裂かれたこの数年間は、前に進むために必要不可欠な工程だったのだと暗喩しているよう。寝ている彼女をNissyが後ろから包みこみ彼女に触れると、眩い光が会場にも広がっていった。

センターステージに現れたNissyは、大切な人へ手紙を綴るかのごとく「君に触れた時から」を歌唱。噴水が呼吸する舞台に佇む姿は、背景映像と相まって物語中の女性を降りしきる雨のなかで待っているようにも見える。切ない視線を投げかけながら「Don’t Stop The Rain」を舞い踊ると、青い炎が思い出を焼き尽くしていく映像を挟み「Say Yes」へ。“君の本音 試そうか?”と不敵に微笑み、緩急のある洗練されたダンスで魅了。切り替えの多い動的なカメラワークは、楽曲の持つ飄々とした空気を掴むと共に、表現力がパワーアップしたNissyの旨味を余すことなく捉えていた。

折り返し地点となり、スクリーンには再びLippyの時計が登場。『HOCUS POCUS 3』の世界観を描くターンを締めくくると、会場一体となって盛り上がる後半へ繋いでいく。VTR内でのNissyは、ラジオコーナーでダンサーのShow-hey・kazuki(s**t kingz)とトークをしたり、チョコレートプラネットと「静かにしろ」のコントにチャレンジしたり。その生き生きとした表情は、付き合いの長い仲間とのトークや自粛期間中に励まされたお笑いとの関わりを心底楽しんでいるように見えた。

コント内でのエンジン音が大きくなり、「静かにしろ!」と勢いよく叫んだのをきっかけに「DANCE DANCE DANCE」へ導かれる。段ボールを積んだ車がアリーナ席に到着すると、箱の中から虎の着ぐるみを着てウサギの耳をつけたNissyが現れた。虎年から兎年に跨るツアーとのことで、2年分の想いをこめた特別なガルピョン仕様。ダンスレッスンタイムを経て動きやすい衣装に着替えると、「OK、じゃあいってみようぜ!」と曲に入っていった。会場はサイリウムと共にカラフルなポンポンで埋め尽くされ、コール&レスポンスの声が響き渡る。チアダンサーズと一緒に息の合ったラインダンスも披露し、場内の熱をグングンと上げていく。「The Eternal Live」に繋がれても勢いは留まることなく、歌とダンスとバンドがお互いを感じ合って呼吸する。生演奏を活かしたソリッドな楽曲アレンジは、バンドメンバーのスキルを感じさせると共に、個々の強みを遺憾なく発揮するダンスメンバーの魅力も鮮明に描写。Nissyも負けじとアクロバットを繰り出し、パワフルなステージを作り上げたのだった。


Photo by 田中聖太郎写真事務所


Photo by 田中聖太郎写真事務所

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