ビョーク来日公演を総括 過去に例のないシアトリカルな非日常空間

最後に届けられた、壮大な愛の賛歌

そして彼女は、機能不全に陥っている現在の社会のシステムを取り除き、世界をまっさらな状態に戻して子どもたちに引き継ぎたいと願う「Tabula Rasa」で本編を終えるが、アンコールでこの曲へのアンサーを提供するのが、映像で登場するお馴染みの環境活動家グレタ・トゥーンベリだ。グレタは地球温暖化の危機に対処しようとしない大人たちへの怒りを露わにし、やるべきことを見極めて行動を起こせば変化は訪れると訴え、次いで衣装を変えて現れたビョークは、「Future Forever」で彼女のメッセージを引き継ぐ。より良い未来を想像し、女性の力でそれを形にしよう――と。

が、これがフィナーレかと思いきや、セットを締め括ったのは、『orchestral』でも聞かせてくれた「Notget」だった。『Vulnicura』が描く悲劇の最終章であり、癒えない傷を抱えながらも“Love will keep us safe from death(愛は死から私たちを守ってくれる)”と宣言する、壮大な愛の賛歌だ。全キャリアで最も野心的なパフォーマンスの終わりにごくシンプルなメッセージを残して、ビョークはステージをあとにしたのである。


Photo by Santiago Felipe


Photo by Santiago Felipe

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〈セットリスト〉
1. The Gate
2. Utopia
3. Arisen My Senses
4. Ovule
5. Atopos (feat. Kasimyn of Gabber Modus Operandi)
6. Show Me Forgiveness
7. Isobel
8. Blissing Me
9. Body Memory
10. Hidden Place
11. Mouth's Cradle
12. Features Creatures
13. Courtship
14. Pagan Poetry
15. Losss
16. Sue Me
17. Tabula Rasa
(アンコール)
18. Future Forever
19. Notget

Cornucopia includes digital visuals created by media artist Tobias Gremmler, Andy Huang, Nick Knight, M/M, stage design by Chiara Stephenson, the flute septet Viibra, clarinet players, a harpist, percussions, electronics and a number of bespoke instruments implemented in the innovative surround sound stage design including a custom reverb chamber.

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