この映画がヤバい──FBIと当局が「テロ攻撃を助長する」と警告した作品 米

経済効果としては観客に高価なポップコーンを買わせるのが関の山という消費財を内部通知で取り上げたことについて、FBIはコメントを控えた。「当局では慣例として、特定の情報案件についてコメントしないことにしていますが、定期的に関係当局と情報を共有し、各機関の管轄コミュニティをサポートしています」との声明を出した。「FBIでは一般大衆に監視を呼びかけ、不信なことがあれば当局へ通報するようお願いしています」

映画は無害かもしれない。だが市民の自由を訴える活動家やその他専門家の意見では、映画の観客がテロリストになりうると全米の警察に通知することで、深刻かつ危険な結末がもたらされるかもしれない。

プライバシー・言論の自由・人権を擁護するNPO研究団体Electronic Privacy Information Centerの顧問、ジェイク・ウィーナー氏はこう語る。「全般的に、こうした文書は当局がリスク分析を行う上で極端な偏見を抱いていることの裏返しです。そのせいで右派の過激な某局行為の脅威は慢性的に見過ごされ、意味もなく環境活動にばかり目が向けられてきました」。

「複数の文書は、これまでの長期的パターンと一致します。関係のない極右暴力行為の事例を取り上げて、中道左派の政治組織への監視や取締りを正当化しようとしているのです」と同氏は言う。「こうした質の劣る分析があまりにも多く、危険です。害のない活動に警察を過剰反応させ、不法監視を正当化することにもなりかねません」

諜報内部文書の一部からは、パイプラインを神聖化する風潮も伺える。南ネバダ・テロ対策センターの治安メモには、「アメリカ合衆国のパイプライン網は国内輸送システムの一部だ。このシステムのおかげで大量のエネルギー商品を消費者や企業に安全に運搬し、文字通り国の経済や生活を動かしている」と書かれている。

一部では警戒の必要性を擁護する意見もあがっており、国土安全保障省(DHS)も情報共有プラットフォームで各地に警戒を発した。DHS高官はローリングストーン誌に宛てた声明でこう語っている。「映画、書籍、動画作品および動画配信チャンネルはアメリカ合衆国憲法の下に守られている。重要インフラへの暴力行為や破壊を助長していると思われる映画や書籍もあるため、我々もいっそう監視の目を光らせ、物理的な安全確保を促進するような戦略・技術・手順を講じるよう関係各所に呼びかけている。何よりも重要なのは、セキュリティ体制の強化に向けて対策を講じ、予想される特定の脅威備えて状況を監視し続けることだ」。

だがブレナンセンターの研究員マイク・ジャーマン氏は、警察官がこうした内部文書に促され、環境グループに過剰反応する可能性があると語る。

「こうした報告は、情報物が警察官の間に恐怖をあおるだけで、現実の脅威を予知するには何の役にも立たないという残念なパターンのひとつです」と同氏は言う。「こうした報告を受けた警察官は、石油ガス業界に抗議する人々や団体への監視を強めること以外に、道理的な行動をとることができるでしょうか?」。

「FBIには環境犯罪を調査する責任があります。ですが多くの場合、FBIは自分たちを公共利益ではなく、産業の守り人とだと考える節がある」とジャーマン氏は続けた。「FBIとATFは映画がもたらす影響を監視するのではなく、現実に起きている犯罪の解決に労力を割くべきです」。

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from Rolling Stone US

Akiko Kato

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