過激信仰で娘・息子・夫を殺害、残された子供の無念「母はただの人殺し」米

だがこの日ライアン氏の証言の山場は、ヴァロウ被告との間で交わされた感情的な通話が再生された時に訪れた。当時被告は留置所に収監されており、デイベル被告の敷地からはJ.J.君とタイリーさんの遺体が埋められているのがすでに発見されていた。

「僕に隠し通せると思ってるのか?」と、通話の中でライアン氏は母親に尋ねた。お前は私と口をきこうとしなかったじゃないか、とヴァロウ被告が言うと、「あんたが妹と弟を殺したと思ったからだよ」とライアン氏は答えた。

「僕は人生最悪な時期にもあんたのために祈っている。あんたが無事だと言っていた妹や弟のためにも祈っている」と、ライアン氏はヴァロウ被告に言った。「あんたは信用できる人だと思ってたのに。こんな人だとは思ってなかった」。ヴァロウ被告が「私のことは生まれてからずっと知ってるじゃないか」と言うと、ライアン氏は「人殺しの母親なんか知らない」と反論した。

通話の中でライアン氏は、ヴァロウ被告にさんざん嘘をつかれたと責めた。あんたは被害者ぶってるけれど、あんたの人生はチャド・ダンベル被告と出会った時から一遍したんだとも言った。ダンベル被告は臨死体験に取りつかれたモルモン教黙示録文学の作家で、ヴァロウ被告にも前世で夫婦だったと語っていた(ダンベル被告も同じ事件で別途裁判を受けており、無罪を主張している)。

「妹と弟はすでに他界して、携帯をやり取りしていた妹はすでに死んでいたなんて」とライアン氏。「可愛いさかりだった弟……養父も含め、家族が全員死んだのは神の思し召しだとあんたは言うけど――さんざんあんなことを僕に言ってきた後で、いまさら世界の救世主イエス・キリストがあんたの味方だと言えるのか?」。ヴァロウ被告はこれに対してそう思うと答えた。

するとライアン氏は、J.J.君とタイリーさんの身に起きたことが神の思し召しだというなら説明してみろとヴァロウ被告に怒鳴った。これに対しヴァロウ被告は、誰も理解できないと答え、死んだ子どもは「私を愛している、2人とも真実を知ったからもう大丈夫だ、私たちだけが真実を理解できる」と答えた。

「本当の母さん、妹、弟、家族みんな、父さん――あんた以外はみんないなくなってしまった。そのせいであんたはいま留置所にいるんだ」とライアン氏は母親に語った。「ずっと聖なる神に祈っている。この状況を乗り越えられますように、と。なぜチャドと一緒に堕落していくのさ? なぜろくでもない奴の後をついていくんだよ?」。さらに同氏はこう続けた。「どんなにあんたに腹を立て、どんなにあんたの夫の顔をシャベルで殴りつけたいと思っても、僕は毎日あんたのために、あいつのために祈ってやってる。あんたのせいで僕は胸がずたずたに張り裂ける思いだ。他のみんなもそうだ」。

悪霊の憑衣と「おはらい」に関するヴァロウ氏とデイベル氏の奇妙な信仰についての証言の他、この日陪審はタイリーさんとJ.J.君の遺体の生々しい解剖写真も目にした。被告弁護団は証拠や証言が感情をかき乱すことを理由にヴァロウ被告の裁判欠席を要請していたが、ボイス判事はこれを却下した。続いて故アレックス・コックス氏の妻ズレマ・パスティネスさんが証言台に立ち、ヴァロウ被告やデイベル被告から教えられた信仰によれば、悪霊は拘束と炎で追い払えることになっていると証言した。掘り起こされたJ.J.君の遺体はガムテープで拘束されており、タイリーさんの遺体には一部やけどの跡があった。

ヴァロウ被告の裁判は3週目を迎えているが、2カ月前後続くとみられている。ボイス判事は3月、仮に殺人罪で有罪となっても死刑は免れるとの裁定を下した。ヴァロウ被告はアリゾナ州でも、元夫チャールズ・ヴァロウ氏殺害の共謀罪に問われている。

関連記事:マインドコントロールでインフルエンサーを恐怖支配、米カルト集団の手口

from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE