カッサ・オーバーオールの革新性とは? BIGYUKI、トモキ・サンダースが語る鬼才の素顔

 
トモキ・サンダース

「不自由」から解き放つフリージャズ


1994年、米ニューヨーク州マンハッタン市生まれ。10歳で父ファラオ・サンダースからアルトサックスを譲り受け、14歳からテナーサックスに転向。バークリー音楽大学を卒業後は、拠点のニューヨークと東京を行き来しながらプロとしてのキャリアを積み上げている。(Photo by eBar)


2022年の1月ごろ、カッサのバンドに参加することになって「マジで!」って。夢が叶ったと思いました。以前のカッサのバンドはポール・ウィルソンとジュリアス・ロドリゲス(1998年生まれのピアニスト&ドラマー)、モーガン・ゲリン(NYの新世代マルチ奏者)がメンバーだったけど、それぞれに忙しくなって、その代わりに僕が入りました。

カッサのバンドに参加するにはジャズの即興感覚と、ヒップホップのアティテュードを持っていることが大事だと思います。その両方をオープンに表現できるのが彼の音楽です。ジャズもヒップホップもソウルもファンクもディスコもあるし、カッサの場合はさらにエレクトロニックな要素もある。だからリリースもWarpですよね。カッサは常にジャズの箱に入ることを望まないので、様々なものを取り入れて今の時代を反映したものを作ろうとしています。そこにはテクノロジーもそうだし、今の社会状況も含まれます。だから、カッサの音楽は様々な意味で今の時代を反映している。


トモキ・サンダースが参加した米NPR「Tiny Desk Concert」でのパフォーマンス。トモキは10月のカッサ来日公演でもバンドの一員として参加する。

音楽もすごく自由なんです。その音楽が到達したいところへ行くために、ナビを使ってそのまま目的地に行くんじゃなくて、回り道したり、ショートカットを使ったりするんですよね。カッサの音楽にはフリージャズの要素もあるんですが、そこには僕の父であるファラオ・サンダースだったり、アーチー・シェップだったり、チャールス・ミンガス、ジョージ・アダムス、ドン・プーレンなど先人へのリスペクトがあります。

カッサの音楽はリズムの形を自由に崩してもまた元に戻るっていうか、色が混ざっていたルービックキューブが一気に揃うみたいにまとまるんですよね。彼の自由さのバランスが僕はすごく好きなんです。フリージャズを適当なメロディだったり、変なノイズを使ったり、みたいな音楽だと思ってる人もいるかもしれないけど、僕が思うフリージャズは「ジャズ」という言葉を自由にするもの。僕の父や先人たちの中には「ジャズ」って言葉が好きじゃない人も少なくなかった。だから、ジャズって言葉を自由にしたい、ジャズという音楽からもっと自由になりたいってムーブメントがあった。それがフリージャズ。オーネット・コールマンやアルバート・アイラー、セシル・テイラー、ドン・チェリー、もちろんジョン・コルトレーン。そういう人たちはジャズのパンク世代みたいなもので、白人社会が構築した形式を無効にしようと、音楽を通じて自分たちが好きな形に、自分たちがやりたいように形式を抽象化していった。社会のなかでの自分たちの「不自由な立場」から解放するようなマインドセットを反映していた音楽だと思う。それによって自分たちの未来を志向したし、祖先とも繋がろうとした。

カッサは自分の音楽で、今のフリージャズを表現しているんです。パンデミックのこと、ジョージ・フロイドのこと、ジェンダーのこと。「人間にとっての自由って何だろう?」って問いを音楽から感じさせる深みがありますよね。カッサはリリックでも人間の多面的な部分を描いていると思うし、自分のフレームと相手のフレームの両方で物事を捉えているし、自分の考えと相手の考えの中間を見たり、自分のアイデアと世の中のアイデアをリンクさせようともしている。僕は彼の音楽にシュルレアリスムを感じたりもしますね。






カッサ・オーバーオール
『ANIMALS』
発売中
国内盤CD:ボーナストラック収録、歌詞対訳・解説書付き
数量限定Tシャツ・セットも発売中
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13345



Kassa Overall Japan Tour 2023

2023年10月19日(木)WWWX
サポート・アクト:TBC
OPEN 18:00 / START 19:00
前売 ¥7,000 (税込/別途1ドリンク代/オールスタンディング)

2023年10月20日(金)ビルボードライブ大阪
1部:OPEN 17:00 / START 18:00
2部:OPEN 20:00 / START 21:00
チケット:S指定席 ¥8,500 / R指定席 ¥7,400 / カジュアル席 ¥6,900

詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13425

 
 
 
 

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