「ツタロックDIG LIVE Vol.12-EXTRA-」、6組のバンドがWWWに刻んだ圧倒的熱量


ペルシカリア

3組目は埼玉発の4ピースロックバンド・ペルシカリア。リハーサルから演奏に合わせて観客の大合唱が響き、矢口(Vo)は思わず笑みを浮かべる。「俺らのこと知っている人、頼んだ! じゃあね」とファンへの信頼の言葉を口にしてステージを一旦あとにした。そして会場の歓声と共に再びステージに登場し本番へ。1曲目の「タイムオーバー」から矢口が魂の叫びを響かせて空気をビリビリ震わせる、その熱量はすぐに客席の後ろまで伝播し、のっけから手が上がる。矢口のギターの弦が切れるというハプニングがあったが「このままやっちゃいます! ピンチをチャンスに変えてこそがロックバンドだと思っていますから笑」とそのまま次の曲「ビビって」へ。真っ直ぐなロックサウンドと全力フルスイングな矢口の歌声にオーディエンスはみるみる吸い寄せられていく。その後も怒涛の勢いで、「死ぬほどどうでもいい」、「恋心納品日」、アップテンポなロックチューンの新曲と右肩上がりで盛り上がるナンバーを次々と披露していった。「東京」では矢口の「歌って!」という声に応えて観客が大合唱するシーンも見られた。ペルシカリアのライブでは、バンドだけでなくお客さんも一緒になって音を奏でて全身でロックを楽しんでいる。「ショートカット」でフロアのボルテージは最高潮に。曲の中盤ではフルギヤ(Gt)のエモーショナルなギターソロが炸裂。観客は拳を高く掲げ、体を揺らしながら聴き入った。最後の楽曲「歓声の先」では、激しい演奏から一変して静寂に包まれたかと思えば、観客がアカペラで大合唱。フロア全体を一体感と多幸感で満たし、再び4人の演奏でサビへ入りラストまで駆け抜けた。すさまじい余韻を残してステージを去ったペルシカリア。いつまでも鳴り止まない拍手が何よりそれを証明していた。


アルステイク

ライブも中盤戦に差し掛かるところで登場したのは、岡山からやってきた3ピースロックバンド・アルステイク。1曲目はミドルテンポでメロウなナンバー「5F」。シンプルなロックサウンドがメロディの強靭さを際立たせる。ひだかよしあき(Vo/Gt)の切なく叙情的なヴォーカルが観客の心にじんわりと染み渡っていく。続いて、アップテンポで軽やかなリズム感が気持ち良い「未完成なまま」を披露し、会場の空気を完全に自分たちのものにする。ひだかはMCで何度も「岡山」と口にしていて、「俺らは地元を背負って音楽をやっている」というような強い覚悟を感じた。切なさ溢れるロックバラード「ワガママ」では、誰しもが共感できる恋愛のささくれ立った感覚をリアルに歌っていて、ふと記憶や感情が込み上げてくる。「裸足と裸足」「chisa」「チェリーメリー」と立て続けにポップで爽快感溢れる楽曲を投下し、フロアの熱はますます高まっていく。「止まらない、止まれない、走れ!」というひだかの雄叫びとともに始まったのは、「走れ」。スピード感あふれるキャッチーなサウンドが、3ピースによるタイトな演奏で疾駆する。「今日出ているバンドで5年後10年後もこうやってライブをやっているバンドって何組いるんだろう?お客さんの中で5年後10年後もライブに来ている人って何人いるんだろう? だからいつ終わってもいいように今日を過ごしたいと思っている」。ひだかが語る言葉の一つ一つに心を強く震わされる。アルステイクは演奏だけでなくMCでも感動を与えてくれる存在なのだと実感した。「バズるもいい、流行るもいい、売れるもいい、でも“一生心に残る”をやりたいんですよね。」と客席に優しく語りかけ、始まった曲は「心」。力強くて、どこか泥臭い彼の歌声は、人間の心の歪みまで美しく表現してくれる。ラストナンバーは「光れ」。圧倒的な表現力と存在感で客席を魅了した素晴らしいライブだった。

Rolling Stone Japan 編集部

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