オリヴィア・ロドリゴが大いに語る、20歳の現在地と『GUTS』のすべて

 
結婚式とボブ・ディラン、憶測との向き合い方

ロドリゴは、占いや霊能力の類が大好きだ。言っておくが、ハリウッド大通りに店を構えているような怪しげな占い師(暗いエネルギーを洗い流すために5000ドル払え、と言うような人たち)ではない。「本物の霊能力者は、そんなことは言わない。私が見てもらった人たちはみんなとても前向きだった。中には、繰り返し会いに行った人もいる。1年後にまた会いに行ったときなんか、『あれはうまくいかなかった。わかってたけど、あなたには言わなかった。あなたには、乗り越える力があると思ったから』って言われて『へぇー、そうですか』って感心しちゃった」

霊能力者の中には、ロドリゴが双子の母親になると予想した者もいたそうだ。「母親になることで頭がいっぱいなの」と言うと、急に話を私にふってきた。「ところで、子どもは何人ほしい? ごめん! こんな深いこと聞いちゃって。まだ会ったばかりなのにね」

私たちは、フィグエロア通りのタコスショップのテラス席に座っている。テーブルの上には、ワカモレを添えたトルティーヤチップスとアイスティーが並ぶ。ロドリゴは、子どもと結婚という話題が大好きだ。『GUTS』の収録曲「love is embarrassing」でも“結婚式を計画してる/あの人とは結婚できないのに”と歌っている。「子どもの頃から『自分の赤ちゃんの名前はどうしよう』ってずっと考えてるの。相手の名字との相性を考えながらね。やばくない?」と言った。

インタビュー中、ロドリゴは自分に向けられた質問を何度か私に投げ返し、結婚について訊いてきた。もうすぐ私(筆者)は結婚するのだ。ロドリゴは「お願い! 最後にひとつだけ質問させて!」と言い、話題は結婚式のBGMになった。ロドリゴ自身、自分の結婚式のBGMをどうするか、何年も前から考えているそうだ。現時点では、ニール・ヤングの「Harvest Moon」、モダン・イングリッシュの「I Melt With You」、ブライト・アイズの「First Day of My Life」が候補だ。「タコス食べながら、結婚式の相談になっちゃった!」とロドリゴは言った。

ボブ・ディランの楽曲をかけるつもりだと言うと、ロドリゴは心から感動した様子だった。「ボブ・ディランのディスコグラフィって、本当に膨大よね。私自身、まだ表面すらこすっていない気がする」と言った。だが、『GUTS』には「Ballad of a Thin Man」にヒントを得た「ballad of a homeschooled girl」という曲が収録されている。このところロドリゴは、『Planet Waves』(1974年)と『Blood on the Tracks』(1975年)にハマっていて、特に後者は飛行機の中でよく聴くそうだ。「ずっと前から『If You See Her, Say Hello』のような曲を書いてみたいと思ってる。ディランはレジェンド。本当に最高」と語った。




タコスショップの店員が、写真を撮らせてもらえないかと尋ねてきた。すると、ロドリゴは「食べ終わってからがいいな」とやんわり断った。いままでの彼女であれば、そうは答えなかっただろう。親友のマディソン・フー(ディズニーのオリジナル・コメディシリーズ『やりすぎ配信! ビザードバーク』の共演者)とハワイに行ったときも、写真撮影はことごとく断っていた。「誰かを傷つけるようなことはしたくない。でも、声をかけてもらうのは嬉しいこと。断ったとしても、相手と話すきっかけになる。断らなかったら、写真を撮って『ハイ、終わり』だから」と言った。

デジタル世代の多くの若者がそうであるように、ロドリゴもソーシャルメディアに対して複雑な感情を抱いている。SNSアプリのない生活なんて想像できないいっぽう、そうしたアプリが重荷になっていると感じているのだ。中でも、彼女が7歳だった2010年に誕生したInstagram(ロドリゴのフォロワー数は3300万人を超える)に関しては、特にそう感じているようだ。「ある本によると——細かい数字は言わないけど——人間の脳って、200人くらいしか認識できないんだって。だから、面識のないオーストラリア人美女がビーチで何をしているかっていう情報は、脳に入れる必要がないわけ。私たちの脳の情報処理能力はそこまで高くないの。だから、何事も話半分に聞くようにしてる。SNSを見ていると、時々気分が落ち込むこともあるから」

多くのポップスター同様、ロドリゴにもソーシャルメディア関連のサポートをしてくれるチームがいる(「本人の投稿かどうかは簡単に見分けられるから、本物感を大切にしてる」とロドリゴ)。だが、2021年に「drivers license」をリリースした当時は違った。「SNSには、心底うんざりした。半年間、SNS関連のアプリを全部削除したの。だって、急に誹謗・中傷が殺到したから。炎上の洗礼を浴びた感じ。だから、長い間アプリを削除したままにしてた。それでよかったと思ってる。いまは、もう少しうまく対処できるけど、当時はSNS断ち以外の方法を知らなかったから。最近は、もっとハッピーな発信方法を模索してる」


PHOTOGRAPHY, PROP CONCEPT, AND COLLAGE CREATION BY JOHN YUYI
DRESS: DILARA FINDIKOGLU. SHOES: FEMME LA. JEWELRY: CARTIER

ロドリゴ本人が「炎上の洗礼」と言ったように、「drivers license」のヒットによって彼女は、良くも悪くも世界中の注目の的となった。(SNLを見ればわかるように)あらゆる世代のリスナーがこの曲に共感した。そのいっぽう、誰もがこの曲の本当の意味を掘り下げようとしたのだ。『SOUR』がリリースされた頃には、ロドリゴとジョシュア・バセット、そしてディズニースターのサブリナ・カーペンターの“三角関係”に誰もが興味津々だった。

3人は、“三角関係”について公の場では何も語らなかった。ロドリゴもそれについて語るつもりはない。私も、“教えてあげたビリー・ジョエルの「Uptown Girl」を、今頃あの娘と一緒に歌ってるんだろうな”(「déjà vu」より)と歌われた男性がバセットであるかどうかをはっきりさせようとは思わない。だが、ロドリゴからカーペンターに“乗り換えた”ことでバセットが浴びた非難についてどう思っているかは気になる。そこで私は、2022年のバセットのインタビューを引き合いにした。ストレスで病気になったと語っていたインタビューだ。

「うーん、ややこしいな。私は、そのインタビューを読んでいないから、なんとも言えない。でも、何もかもがクレイジーだった。個人同士で対処するべきことなのに」とロドリゴは言い、次のように訂正した。「対処っていうのは、正しい表現じゃないかも。とにかく、このことについては公の場で話したくない。彼の言っていることは本当だと思うけど、すべてはプライベートなことだから。声明文を発表するつもりもない。そんなの嘘くさいし。結局のところ、私たちは人間だから。SNSしか見ない人にはわからないと思うけど、こういう問題には個人として対応してる」

 

それでも世間は、ロドリゴのプライベートを詮索することをやめないだろう。6月末に約2年半ぶりの新曲「vampire」がリリースされるや否や、ファンの間で新たな憶測が飛び交った。今回のターゲットはバセットではなく、プロデューサーのアダム・フェイズとDJ/インフルエンサーのザック・ビアだった。両者とも、ロドリゴと交際中と噂された年上の男たちだ(“あなたの年の女の子はもっとよくわかってるから”という歌詞がその点をほのめかしている)。歌詞に登場する“夜になると出てくるクールな人”は、ビアを指しているのかもしれない(それを裏打ちするかのように、ビアはGQ誌のインタビューで「過去4年間で家にいたのは4、5回だけ」と語っている)。こうした憶測はきりがない。果たして「vampire」は、「drivers license」と同じように詮索の対象になってしまうのだろうか。

「最近は、あまり気にしなくなった」とロドリゴは言う(タコスショップのスピーカーから、アーケイド・ファイアの「Wake Up」が大音量で流れている)。「私は誰も見てないところでやるべきことを全部やっているし、こうしたことに可能な限り備えるようにしてる。だから、世間は言いたいことを言えばいい。コントロールしようとすればするほど自分が惨めになるし、問題も大きくなる気がする。私はただ、曲を書いているだけ。誰かのために曲を解釈するのは、私の仕事じゃない」

タコスショップでのインタビューの1カ月後、別のメディアのためにいくつかインタビューをこなしたロドリゴと再会すると、別の見解を示した。「私って本当にビッグマウスなの。この仕事をするには、それをコントロールする方法を身につけなければいけなかった」と電話会議アプリ越しに言った。「でも、それは仕方のないこと。私は日記のような歌詞を書くから、いろんな解釈をされるのは当然なの」

インタビューの途中でロドリゴは、カーリー・サイモンの「You’re So Vain」に触れた。50年以上前の曲だというのに、いまだにいろんな憶測を呼ぶ曲だ。私は、意を決して「vampire」はビアのことを歌っているのかと質問した。ロドリゴはふと黙り、深呼吸をして笑顔で言った。

「ノーコメント」


>>>後編に続く
オリヴィア・ロドリゴが語る『バービー』への共感、テイラー・スウィフトとの関係

From Rolling Stone US.




オリヴィア・ロドリゴ
『GUTS』
発売中
再生・購入:https://umj.lnk.to/OR_GUTS

オリヴィア・ロドリゴ日本公式HP:https://www.universal-music.co.jp/olivia-rodrigo/

Translated by Shoko Natori

 
 
 
 

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