母親から車椅子での生活を強いられた娘、殺人罪の服役を経て釈放 米

およそ20年間も娘のジプシーが病気だと偽ってきた母親のディーディー(OURTESY OF HBO)

2016年、母親のクローディン・ブランチャード(通称ディーディー)の殺害に関与したとして第2級殺人罪で有罪を認めたジプシー・ローズ・ブランチャードが、12月に仮釈放されることになった。

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ミズーリ州矯正局は先月29日、チリコシー更正センターで3年間服役していたブランチャードが、当初の予定よりも早く12月28日に釈放されると発表した。

ブランチャードは母親から長年にわたって虐待を受けた後、キリスト教徒専用マッチングアプリで知り合った恋人ニコラス・ゴーディジョンに殺害を依頼した、と自供して懲役10年を言い渡されていた。

ゴーディジョンは2019年に終身刑が確定している。

2015年の「ディーディー殺人事件」は全米メディアで報道され、HBOの『Mommy Dead and Dearest』など数々のドキュメンタリーを生むきっかけになった。その理由は殺人の残忍性だけでなく――ディーディーは17回刺されていた――動機にある。母親が遺体で発見された数日後、ジプシーとゴーディジョンはウィスコンシン州にあるゴーディジョンの自宅で逮捕された。

逮捕後、殺人事件の何年も前から隠されていた嘘が明らかになった。母親は娘が幼いころから、ジプシーが障害児で慢性疾患を抱えていると思い込ませ、不必要に手術や投薬を受けさせていた。家族や友人にはジプシーが白血病と筋ジストロフィー、喘息、脳損傷を患っており、7歳児程度の知能しかないと信じ込ませた。この間、母親はHabitat for Humanityやロナルド・マクドナルド基金、メイク・ア・ウィッシュ基金などの慈善団体から寄付金を集めていた。

両脚を完全に動かせたにもかかわらず、ジプシーは8歳から車いす生活を強いられた。「ママが何をするか分からず、怖かったので、車いすから起き上がることができなかった」とは、Investigation Discoveryが2018年に放映したドキュメンタリー番組『Gypsy’s Revenge』での本人の言葉だ。「頼れる人は誰もいなかった」。

大勢の専門家が事件を研究し、母親は「代理人によるミュンヒハウゼン症候群」を患っていたのではないかとの結論に至っている。周りからの注目や同情を集めたいがために、親や保護者が別の人間の病気を誇張したり、でっちあげたり、誘発したりする精神疾患だ。

「ママと暮らしていたころよりも、刑務所の方がずっと自由だと思う」と、ジプシーは報道番組『20/20』とのインタビューでも語っている。「だって今は……普通の女性として生活することができるから」。

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from Rolling Stone US

Akiko Kato

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