ヌバイア・ガルシアが熱弁、UKジャズとクラブミュージックの深く密接な関係

ダブやサウンドシステムへの特別な情熱

―ダブやサウンドシステムの話も出てきましたが、スピーカーのタワーが立っているようなサウンドシステムにもよく行ってたりしたんでしょうか?

ヌバイア:ええ。

―それは子供の頃から?

ヌバイア:4歳の頃、カーニバルに行ったのを覚えている。サウンドシステムの体験は、ダブが最初だったわけじゃないかな。どちらかというと、ダブは家や車のなかでよく聴いていた。母が教えてくれた私と弟の面白いストーリーがあって、私たちは後部座席からずっとボブ・マーリーの「Three Little Birds」をかけてってリクエストしてたんだって(笑)。まだ幼い、4歳の頃にね。それから、歳を重ねて気づいたのは、ダブっていう音楽が私のベースにあったこと。それはクラブともドラムンベースとも違う、別軸でのエネルギーを持っていて、ダブは私にとって特別な関わり方をしてる。今も昔も好きだし、ロンドンで時間がある時は、ダブを聴きに出かけている。



―例えば、どのサウンドシステムが好きだったんですか?

ヌバイア:昔も今も、Channel Oneのサウンドシステムのラインにはよく行くね。それからAba Shanti-Iも素晴らしい。あとはアイレイション・ステッパーズ。ちょっと違うサウンドシステムだけど、踊らせてくれるって感じ。この3つかな。ジャー・シャカはもう大御所だし。そうそう、面白い話があって、私の父は昔ロンドンのヴォクソールで行われていた初期のサウンドシステムを撮影していたんだって。私がその映像を喜んで観ていると、父は「このテープは当時、俺が撮ったんだぞ」って言ってくる。ちょっと自慢気になるんだよね(笑)。

―同じような趣味を持つ周りの友達とよく行ってたりしたんですか?

ヌバイア:ええ、今でも。ラッキーなことに家の近所にいくつかサウンドシステムがあるから、家にいる時は1人でも行ったりする。ただその場にいるだけでいい、誰にも邪魔されない、私にとってすごく安全な場所。例えば、ふらっと数時間だけ行って好きなように過ごしたりもするかな。



―特に好きなレゲエ/ダブのアーティストは?

ヌバイア:ボブ・マーリーはたくさん聴いてきたし、それからブジュ・バントンも。義父が彼を大好きだったんだ。今はキング・タビー、プリンス・ジャミーにホレス・アンディ。(自分用の)すごく長いプレイリストもあるの。1つはダブとレゲエ、それからステッパーズ・ダブにルーツ。分類してプレイリストを作るのが好きなんだよね。その音楽の世界観に浸りたいとか、特定の音楽を聴きたい時とかあったりするでしょ? 昔の作品やアーティストと同様、新しいものもチェックしている。

私がサウンドシステムで好きなのは、ダブ・プレート。なぜかって、その曲をもう一度聴くことはできない、もしくは探せないから。曲の情報を知らせてるわけでもないし、Shazamも役に立たない。その場にいない限りは体験できないじゃない? もう一度その曲を聴きたいがためにその場所に戻ったり、家でその曲を聴くために、名前が分かるまで人に尋ねて回ったり……そんなことをしていたティーンの頃が懐かしいな。背景や知識がなくても、ただその瞬間に起こることを楽しめる、そのエネルギーが好きなんだよね。素晴らしい音楽と出会って、吸収して、またその体験をしに戻ってくる。もしかしたら、その場に居合わせたかもしれないし、いなかったかもしれない。そういう偶然性って素敵じゃない?

―ちなみに、ブジュ・バントンはどういったところが好きなんでしょうか?

ヌバイア:彼の声の虜になった。だって、とてもユニークでしょ? 初めて聴いた時のことを覚えている。その頃、義父はMP3プレイヤーにハマっていて「ああ、持っていけよ」って渡されたんだけど、そのなかに入ってた音楽の量は異常だった。こんな小さいメモリースティックに、ありえないほどの曲が入っていて、どこから手をつけたらいいか分からないくらい。そこに入っていた彼の声は、本当に魅力的だった。



「Source」はレゲエ/ダブの影響が顕著な一曲

―あと、ヌバイアさんはNTS(ロンドン発のネットラジオ局)で番組を担当していたり、いろんな場所で選曲をたくさんしてますが、DJもやってるんですよね?

ヌバイア:ええ。でも、私は自分のことをDJだとは思ってない。だって、素晴らしいDJをたくさん知ってるし尊敬しているから、自分をDJって呼ぶのはやっぱり気が引けるかな。彼らはまるで楽器のようにプレイするし、私が音階を熟知しているようにビートマッチングを熟知している。だから、私は自分のことを「セレクター」って呼んでるの。ダブのアイディアにも近いと思うし。

―セレクターですか。

ヌバイア:ええ。私は、ほとんどの時間をサックスの練習と作曲に費やしてるから。もし、DJのスキルを磨くことに時間を割けるようになったら、自信を持ってDJって言えるかもしれない。でも、今のところその2つはかけ離れてもいる。私は楽器のようにプレイするDJを純粋にリスペクトしている。もちろん、選曲するのは好きだし、エネルギーの方向性をキュレーションするのも好きなんだけどね。

―セレクターはいつ頃からスタートしたんですか?

ヌバイア:大学のちょうど折り返しの頃かな。「Balamii」っていうラジオ番組に出たの。番組を制作している友達がいて、ゲストとして招待してくれたのが始まりだった。そこから、「Balamii」のオーガナイザーと知り合った。彼が「番組やらない?」と言ってくれて。日曜日の朝8時から始まるから、身体がついてこなくて、「こんなに早い時間から毎週やってるなんてありえない!」って思ってたりもした。でも、本当にいい時間だった。ゲストとして1年に数回やらせてもらって、その1年後に「番組をやらないか」って誘ってくれた。それから時々やるようになって、レギュラー番組も数年間やった。NTSに出るようになったのもそんな感じのきっかけだったと思う。ツアーがあるからレギュラーではできなくなっちゃったけど、ラジオは楽しいし大好き。

Translated by Miho Haraguchi, Natsumi Ueda

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