Silica Gel 韓国最重要インディバンドが語るギターの可能性、実験精神、来日への想い

Silica Gel

Silica Gel(실리카겔)は現在韓国のインディロック・シーンで一番勢いのあるバンドだ。今年は20近い韓国国内の音楽フェスに出演したし、来月予定しているソウル市内では最大級の一つである、3000人弱のキャパのホールでの3日間の単独公演も即完。いま韓国で最もライブのニーズが高い彼らは、決してバンド・ミュージックが主流でないこの国で、いまやトップ・バンドの1組だ。そんな彼らが11月3日に開催される、アジアの注目アーティストが多数集結するイベント『BiKN shibuya 2023』で5年半ぶりの来日を果たす。

Silica Gelが発表する作品は常に新鮮で、聴き手に驚きを与えてきた。モダンなサイケデリック・サウンドを基盤に、ドリームポップ、エレクトロニカ、フォークなど多様なジャンルを昇華し、ミックスさせる音楽性自体はもちろん、近年はメンバーが作ったアイデアの断片を一つの曲の中で無数に繋ぎ合わせた「S G T A P E - 01」、「I'MMORTAL (feat. sogumm)」など制作手法自体もユニークだ。また、一方で昨年のヒット・シングル「NO PAIN」から今年発表したEP『Machine Boy』にかけては、ギター・リフやテクニカルなソロ演奏を前面に押し出し全てのロック・ファンの心を掴んだかと思えば、メタリックになった音の質感などディテールな面での探究心も忘れない。筆者はSilica Gelは世界的に見ても有数の進歩的なロック・バンドではないかと思う。

そしてSilica Gelの独自性は音楽性だけに限らない。メンバー全員がシンセサイザーを操り作曲が出来ることを武器に、制作過程ではメンバー4人全員でバンドの色を作るチームプレイを常に重視。MVやデザイン、ファッションも信頼出来るパートナーと常に組み、バンドに関わるあらゆるプロセス、要素をコントロールしようとする姿は、韓国を超えてたくさんのインディペンデント・ミュージシャンにとってもロールモデルの一つになりうるのではないだろうか。

そんなSilica Gelの久々の日本でのライブ・パフォーマンスを前に、ユニークな楽曲を制作する過程や、ギターを軸にした近作のバンド・サウンドと12月に発表予定のニューアルバム『POWER ANDRE 99』についての考え、さらに活動全般に対するスタンスなどを聞いてきた。




―一昨年から昨年にかけて発表されたシングル「S G T A P E - 01」「Desert Eagle」「I'MMORTAL」は、どれもいくつかの別々な曲が混ざったような構成が面白かったです。この時期はこうしたアプローチにハマっていたのでしょうか?

キム・チュンチュ(以下チュンチュ):特に「S G T A P E - 01」と「I'MMORTAL」はほぼ同じ時期に作られたこともあり、曲のスタイルがちょっと似ていますね。「S G T A P E - 01」は、メンバーがスタジオにみんなで集まって、現場でリアルタイムで録音するゲームのような感じで作りました。録音しておいたトラックの上に、さらに即興で録音して、それが一つの形になって、24分のトラックとして完成しました。「I'MMORTAL」もみんなで集めておいたモチーフを一つずつ聞きながら、「これとこれいいね、これをこうやって繋げてヴァースの時に使って、これはコーラスの時に使えばいいよね」みたいに話し合いながら、合体ロボットを作るように一つの塊にしていきました。僕たちは頭脳が4つあるので、多様なアイデアを一つに合わせたら、とても面白い曲が出てるだろうと思いました。意味のある作業だったと思います。

キム・ハンジュ(以下ハンジュ):「I'MMORTAL」の構成について説明すると、ヴァースで繰り返されるテーマは僕が作って、その上の歌メロはウンヒが作ったし、その2つのアイデアが一つのパートの中で組み合わさりました。その次のブリッジはチュンチュが作ったし、それに続けて、コンジェ兄さんのドラムはどう入ってくればいいかと話し合いながら、作ったんです。ポップミュージックのフィールドでは複数人の作曲家たちが一緒に一つの曲を完成させるソングキャンプというものをやるじゃないですか。そういうのを一度試してみたいという思いもありました。一度Silica Gel流のソングキャンプをやってみたらどうかなと思っています。

―「I'MMORTAL」にはsogumm(韓国のシンガーソングライター)がフィーチャリングで参加しましたね。

キム・ゴンジェ(以下ゴンジェ):sogummとは以前から親交があったのですが、ちょうど「I'MMORTAL」を作るときに彼女の歌声が必要だと思いオファーをしました。その後、sogummからも僕たちのバンド・サウンドが必要だと話をもらえたので、彼女の「I Love You」という曲に快く参加して、恩返しが出来ました。



一24分の大曲「S G T A P E - 01」はずっとスタジオで寝食を共にしながら作ったと聞いています。大変な経験だったのではないかと思ったのですが、どうでしたか?

チェ・ウンヒ(以下ウンヒ):「S G T A P E - 01」の制作過程は大変というより、むしろただ会ってゲームをするような感覚でした。「S G T A P E - 02」もやってみたいと思ったメンバーもいるんじゃないかと思います(笑)。

ハンジュ:とても楽しかったし、メンバーから学ぶ点もたくさんありました。こうやって作った曲だけの特徴もあるので、そういう感じがまた必要になればやってみるし、必要に応じて選択することになると思います。



一その後のシングル「NO PAIN」はインディ・シーンを超えて大衆にSilica Gelを広めるきっかけにもなりましたし、皆さんの新たな代表曲にもなりましたね。そうした特別な曲になることは予想できましたか?

チュンチュ:「NO PAIN」は昨年の8月末に発表しましたが、その前の春の単独公演で初めてライブで演奏して以来、ずっと準備していたんです。なので、リリースまでの準備期間が長かったし、その間どういう方向にターゲットを絞ってレコーディングやアレンジをするかという話をずっとしてきたので、方向性がはっきりしていたんだと思います。何より「NO PAIN」は今まで僕たちがSilica Gelでやっていた実験的でおかしな感じの曲たちよりはわかりやすい曲になるだろうと思ったし、そういう面をよく把握して制作した結果、大衆にも刺さったんだと思います。

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