CRYAMYが語る、アルビニに直アポで実現した極限の創作活動、インディペンデントの矜持

日本の音楽を聴くようになった理由

―アルビニの過去のワークスの中で特に好きな作品を教えてください。

カワノ:僕はPJハーヴェイの『Rid of Me』が一番好きです。あとは、ドン・キャバレロも好きですし、比較的近年だったらクラウド・ナッシングスの『Attack On Memory』も大好きですね。





―『Rid of Me』が一番好きなのは何か理由がありますか?

カワノ:音の話からはずれるかもしれないけど、あのアルバムの歌詞をたどると、PJのむき出しの心情というか、雑な括りかもしれないけど……あれは男にキレてるアルバムじゃないですか(笑)。その絶望感を表現してたり、あえて猥雑な表現を使っていたりするのも好きだし、あとは多分PJのキャリア上で、あのトリオのバンドで録った最後のアルバムだったはずで。あれ以降はサポートメンバーで録ってると思うんですけど、あのアルバムはツアーを回ってたメンバーで録ってるんですよね。その歪さというか、統制する人間がいない状態でせめぎ合ってる感じ、音質で言えばすごくトーンの低い、ロウな感じも好きですね。

―エレクトリカル・オーディオでは日本のバンドも過去に録音を行っていますが、そういう作品も聴いてましたか?

カワノ:めちゃめちゃ聴いてました。54-71とか大好きで、あんまり落とし込めてるかわからないですけど、今回のアルバムもちょこちょこ54-71的な感じは意識していて。

―音数が少ない、ドラムとベースのみの緊迫感みたいなのは54-71っぽいなと思いました。

カワノ:あとGEZANは僕がバンドを組む前によくライブに行っていて、GEZANに関しては音楽的にもよりパンクロックとかハードコアライクな部分があるので、僕らにもちょっと近いというか、僕がすごく参考にしたっていうのは大きいですし、あとはZENI GEVAも好きで。あれは高校を辞めたぐらいかな。ハードコアが好きな先輩が教えてくれて、音もかっこいいし曲もかっこいい。だからアルビニが録った中でもよりハードコアというか、日本人だとそういう方面のバンドをよく聴いてましたね。

―CRYAMYももちろんハードコアな要素がありつつ、でもちゃんとポップな歌の側面もあるから、そういう意味ではART-SCHOOLを連想したりもして。

カワノ:ART-SCHOOLはもともと大好きで、なんなら音楽的にも一番影響を受けてるかなってくらい好きなので。アートはエレクトリカル・オーディオの天井が高い方の部屋で録ったみたいで、僕らはだだっ広い体育館みたいな部屋で録ったから、音響は微妙に違うと思うんですけど。アートに限らず2000年代ぐらいのギターロックはもともとすごく好きで、syrup16gやBUMP OF CHICKENもそうですし、スパルタローカルズ、アナログフィッシュ、フジファブリックとか、あのあたりは満遍なく全部聴いてました。

―最初にそういう日本のバンドを知って、彼らが影響を受けている海外のバンドを知って行く、みたいな流れだったわけですか?

カワノ:僕は逆ですね。最初に音楽に触れたきっかけは、父親がたくさんレコードを持ってたんですよ。僕は家庭がちょっと複雑で、父親が精神的な病気で、小学生から母親と妹とおばあちゃんと生活してる時期があったんです。その頃に父が好きだった音楽を聴くようになって、父はビートルズとか、メロディアスなものが好きだったので、そういうものをたくさん聴くようになって。ただ父が帰ってくると、僕ももともと素行のよろしい子供ではなかったのもあって、よくぶつかって、音楽自体はずっと好きだったんですけど、父への反抗心で、振り切ってハードコアを聴くようになったりとかして。だからそれまで日本の音楽は全く触れてなくて、むしろすごく馬鹿にしてた部分が多かったかな。僕は15歳で実家を出てるんですけど……。

―「THE WORLD」の歌詞通りに。

カワノ:そうですね。僕は島の出身なんですけど、本土の方に出て、そこの繁華街というか、ちょっと悪い子たちの集まりみたいなところで教えてもらったのが、いわゆる邦ロックと言われるもので。今思うと変だったのが、NEW ERAでダボダボのズボンとか履いてるやつが「この曲めっちゃ泣けるんだよ」って渡してきたのがsyrup16gの「My Song」だったりして(笑)。



ーいい話(笑)。

カワノ:で、そこからそういう日本の音楽も聴くようになったんです。

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