2023年ベスト・メタル・アルバム トップ11

4位『… So Unknown』ジーザス・ピース(Jesus Piece)


辛辣な楽しさと目眩がするほどのラウドさを兼ね備えた最新作は、モッシュ・ピット受けすると同時に、驚くほどの優しさも感じる。破滅や孤独といったハードコアではお決まりのテーマに加えて、フロントマンのアーロン・ハードは、失われていく家族との関係も歌っている。アルバムを締めくくる楽曲「The Bond」では、次第に遠ざかる兄弟との距離をテーマにし、息子に対する愛をストレートに歌う「Silver Lining」は、間違いなく名曲だ。「FTBS」のようにニュー・メタルの典型のような曲もあるが、どこまでもヘヴィなボーカルと楽器が、陳腐さを打ち消している。泣きのメロディーから一転して激しくなり、そしてまた静かに展開する。(B.E.)

3位『Desolation’s Flower』ラガーナ(Ragana)


『Desolation’s Flower』は、ラガーナの4枚目のアルバム。マルチインストゥルメンタリストのコーリーとマリアの二人が、ドラムとギターとヴォーカルを交互に担当し、ユニークで反ファシスト的な歌詞を誇らしげに歌い上げる。一見静かに思える楽曲「DTA」や力強さと脆さを兼ね備えた「Winter’s Light Pt. 2」には、ラガーナのパワフルなパトスが表現されている。彼女たちのアプローチに生来備わったシンクロニシティーは、ブラック・メタル、ドゥーム・メタル、シューゲイザー、クラスト・パンクの何層にも重なったヘヴィでアトモスフェリックなタペストリーを編み出す。そして、溶け出す氷河のような危うい美しさと共に、満ちては引いていく。(K.K.)

2位『Purge』ゴッドフレッシュ(Godflesh)


ゴッドフレッシュのアルバム『Purge』のハイライトとも言える曲「Army of Non」は、まるでラジオの局から局へと周波数を合わせているように、ギターのチューニングの音や、90年代のヒップホップのブレイクビートや、トランシーバーに向かって怒りをぶつけるトラック運転手の怒鳴り声などが入り混じる。しかし不協和音が重なることで、全体として華やかで儚い世界を描き出す。インダストリアル・メタルの雄であるゴッドフレッシュは、1992年のヒット・アルバム『Pure』でも同様のやり方を採用した。しかし今回は、よりシンプルなギターリフと、より曖昧な歌詞によって完成度を高めている。その集大成とも言える「The Father」では、唸るようなギターリフと釘打ち機のようなドラムマシーンが見事に絡み合い、ジャスティン・ブロードリックが「信用できる奴は誰もいない」と歌う。目覚まし時計代わりにかけてみることをお勧めする。(K.G.)

1位『72 Seasons』メタリカ(Metallica)


『72 Seasons』というタイトルは、人生の最初の18年間を指すように思うかもしれない。しかしメタリカは、バンドとして12枚目となるアルバムで、その後の人生の生き方を示したのだ。ジェイムズ・ヘットフィールドは2023年に60歳を迎えたが、他のメンバーも同世代だ。ミスフィッツ風の楽曲「Too Far Gone?」では「もう手遅れか? 何とか今日を乗り切れるように手を貸してくれ」と助けを求める。そして「Lux Æterna」では、昔の曲でも使った「フルスピードで行くしかない」というフレーズを再び歌っている。平均的な人々が隠居生活に入る年齢に近づくにつれて、歌詞の聴こえ方も少し変わってくる。しかしメタリカは、平均とは相当かけ離れている。『72 Seasons』では、バンドのアイデンティティーを(そしてもちろん、首が折れるほどのテンポも)維持しながら、自分たちのサウンドをさらに突き詰めた。「You Must Burn!」には、ロバート・トゥルヒーヨ(ベース)による不気味なまでにエフェクトをかけたバッキング・ボーカルがフィーチャーされている。ヘットフィールドによる苦難へのラヴレターと言える11分間の「Inamorata」は、サウンド的には、ゴミ圧縮機の中に落ちても喜んでいるような感じすら受ける。メタリカは歳を取ったかもしれないが、サウンド的には全く衰えを知らない。(K.G.)

From Rolling Stone US.

Translated by Smokva Tokyo

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