「なぜ校舎に入らなかった?」...米ロブ小学校銃乱射事件、遺族の悲しみと怒り

ヴェロニカ・マタさんにとって、報告書は古傷を広げて怒りをかきたてる結果となった。「なぜ校舎に入らなかったのでしょう?」と、警察当局についてマタさんは言った。「本人たちから話を聞きたい。なぜあんな決断をしたのか、教えてもらいたい。自分たちに非があったと認めてもらいたい」。

多くの遺族がそうであるように、マタ・ルビオさんも答えのない問いが頭から離れずにいる。「娘はどのぐらいまで生きていたのでしょう。早くに殺されたのか、それともじっと待機して怯えていたのか」と言うマタ・ルビオさんは今でも毎日娘に語りかけているという。「今日は娘のために、ひとつ任務が果たされました。娘も喜んでいるといいのですが」。

ヴェロニカ・マタさんも同じような悲しみや混乱を抱いている。「テスは最初のほうで殺されたのか、それともずっとずっと最後の方だったのか。それを思うと、みぞおちの辺りが痛くなります。ひょっとしたら娘を救える可能性があったかもしれない。警察は全力を尽くしてくれなかった」。

事件の後、ユバルディ警察は事件発生から最終的に犯人を射殺するまでの77分間、実際に校内で起きた出来事について矛盾する説明を発表した。事件から1カ月以上が経過した2022年7月12日、オースティン・アメリカン・ステーツマン紙が校内の監視カメラの映像を公開し、警察は事件発生から3分後には校内にいたことが判明した。犯人が30分近く発砲を続ける中、戦術装備や盾で武装した警察官は突入方法を巡って言い争っていた。

映像には警察当局が携帯メールを送ったり、電話を掛けたり、壁に取り付けられた消毒液で手をこすり合わせる姿が映っていた。拳を突き合わせて挨拶をかわし、犯人が立てこもっている教室の鍵を探し回っていた。その間教室に閉じ込められた子どもたちは、負傷した同級生や教師や射殺体に囲まれながら、何度も緊急番号に通報を試みていた。

ユバルディ警察のピート・アレドンド署長は2022年8月、ユバルディ教育委員会の全会一致で解雇が決定した。同年10月にはユバルディ学区管轄の警察部門の職員全員が停職処分となった。

事件を受けてロブ小学校は廃校。2022年6月には市より校舎の解体が発表された。ユバルディ市のドン・マクローリン市長は解体決定について、「子どもたちや教師に、あの学校へまた通えとは言えません」と述べた。

校舎はいつかなくなるだろうが、我が子や愛する者を失った遺族の痛み、コミュニティに刻まれた傷が消えることはない。

報告書から遺族は何を望んでいるのか。マタ・ルビオさんが求めているのは説明責任だ。「地元行政には報告書を読んで、勧告をしっかり検討していただきたい。そして責任のある警察官を懲戒処分にするとか、刑事起訴するとか、二度と同じことが起きないよう政策を改めるとか、行動で示してほしい」。


Akiko Kato

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