ハードロックの固定概念を覆す、シャインダウンの「信念」をフロントマンが語る

アダルトコンテンポラリーやカントリーのリスナーを開拓

シャインダウンの最新シングル「A Symptom of Being Human」は、そのコンセプトを体現している。パンデミックの最中にスミスがバンドのベーシストのエリック・ベースと共同で書き上げたこのピアノ・バラードは、自身喪失や不安など、人間のメンタルヘルスを脅かすものについての曲だ。“時々、俺は居場所のない部屋に閉じこもってる/その家は炎に包まれているけれど、警報は鳴らない/壁も溶けてきてる”とスミスは歌う。“君はどうだ?”



ロック系とオルタナティブ系のチャートで既にヒットを記録している「A Symptom of Being Human」は、よりシニア層のリスナーが多いビルボードのAdult Pop Airplayチャートでも躍進している。Spotifyは最近、ケリー・クラークソンやデュア・リパ、そしてスミスの友人であるジェリー・ロール(2人は2022年にナッシュヴィルで行われたショーのステージで、スキナードと一緒に「Simple Man」を歌っている)等の楽曲と共に、「A Symptom of Being Human」を人気プレイリストJust Good Musicに加えた。

しかし、スミスが同曲をアダルトコンテンポラリーの分野でもっと宣伝すべきだと提案したところ、シャインダウンが長年所属しているレーベルAtlanticは困惑した様子だったという。「あの曲はそういう層にアピールすべきだって主張したんだ。でも周りの反応は『一体なぜ?』という感じだった。そういうオーディエンスを俺たちはまだ獲得できていないし、Hot ACは制するのが最も難しいチャートだからだ」

その戦略は見事に功を奏し、同曲はAdult Pop Airplayチャートで15位にランクインした。シャインダウンがHot ACチャートで存在感を発揮できるのであれば、異なるフィールドのアーティストがロックのリスナーから支持を得ることも可能なはずだとスミスは主張する。彼はオリヴィア・ロドリゴを例に挙げる。

「彼女がグラミーのロックのカテゴリーでノミネートされたことに文句を言う奴らもいる」と彼は話す(「Ballad of a Homeschooled Girl」は2024年2月に行われるグラミー賞の最優秀ロックソング部門でノミネートされている)。「俺もあのレコードを聴いたけど、すごくイカした曲もある」。そう話した上で、彼はこう続けた。「北米のロック系ラジオ局のどれが彼女の曲を最初にかけ始めるのか、すごく気になるね。双方にとってウィンウィンになるはずさ」

シャインダウンはカントリーのリスナーからも支持され始めている。彼らは7月にアイオワで開催されるカントリーロック系フェスのTailgates N’ Tallboysに、ジェリー・ローリーやベイリー・ジマーマン、ネイト・スミス、キャデラック・スリーらと並んでヘッドライナーとして出演する。「ハーディの躍進をはじめ、去年のカントリーのシーンは本当にエキサイテイングだった。俺たちの盟友、ジェリー・ロールのクロスオーバーもね」とスミスは話す。「今は音楽の消費の仕方が大きく変わろうとしている。俺はそれを大いに歓迎しているんだ」

「A Symptom of Being Human」は、シャインダウンを縛り付けていたハードロックバンドというイメージを永遠に葬るのかもしれない。スミスは同曲について、音楽の趣味だけでなく、政治や文化の価値観の違いを超えて人々を結びつける力があると信じている。彼は最近、同曲をステージで披露する前にガザの惨状について言及し、戦禍で罪のない人々の命が失われ続けていることを忘れるべきではないと主張した。


Photo by Sanjay Parikh

「今は人々の考え方や倫理観の二極化が進みつつある」と彼は話す。「対話が次第に熱を帯びて、怒号や罵声が飛び交い始める。相手の言い分が気に入らないという理由でね。そんな風潮の中で、どうすれば敵対や分断を回避できるのか、誰もが頭を悩ませていると思う」

そのヒントは、シャインダウンの思いがけないヒット曲のタイトルの一部「Just be human」(人間らしくあること)に隠されているのかもしれない。

from Rolling Stone US

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