ブルース・ディッキンソンが語る「マンドレイク計画」の真実、アイアン・メイデン日本公演の展望

Photo by John McMurtrie

ブルース・ディッキンソン(Bruce Dickinson)がソロ・アルバム『The Mandrake Project』を完成させた。

アイアン・メイデンのヴォーカリストとして世界のヘヴィ・メタル界に君臨する彼だが、バンドに収まりきらない音楽性をソロ・キャリアで解き放ってきた。通算7作目、9年ぶりとなる本作ではハード&ヘヴィさを貫きながら幅の広いサウンド、そしてミュージック・ビデオやコミックを交えた壮大な世界観を提示。秘められた“マンドレイク計画”の真実へと導いていく。

今年9月にはアイアン・メイデンの日本公演も決定したブルース。1958年生まれの65歳となったが、ステージ狭しと駆け巡るライヴ・パフォーマンスそのままのアドレナリンが溢れるトークで『The Mandrake Project』を語ってくれた。



―アイアン・メイデンのアルバム『Senjutsu』(2021年)に伴うワールド・ツアーがまだ続いていますが、このタイミングでソロ・アルバムを発表することにしたのは何故ですか?

ブルース:好んでこの時期にアルバムを出すことにしたわけではなかったんだ。2014年には新曲を書き始めていた。でもその後、喉頭癌になったり、メイデンのツアーで3年をかけて世界を回って、ようやくスケジュールが空くと思ったらコロナ禍で作業がストップしたり……ようやく完成させることが出来たと思ったら、アナログ盤のプレスに時間がかかることが判って、ようやく(2024年の)3月にリリースすることになったんだ。アルバムの出来映えには自信があったから、世界中のみんなに聴いてもらえないのはフラストレーションが溜まったけど、待ったかいがあったよ。

―アルバムの曲を書いてからそれだけ時間が経過すると「ああすれば良かった」など客観視出来るのではないですか?

ブルース:幸運なことに、そう考えることはないね。アルバム最後の「Sonata (Immortal Beloved)」は25年前に書き始めた曲だった。「Shadow Of The Gods」は20年前ぐらいかな。大半は2013年から2014年に書いて、ロイと一緒にデモを録ったけど、未完成のままだった。ドラム・マシンを使って、ヴォーカルもラフなスケッチみたいなものだったんだ。最も新しいのは「Afterglow Of Ragnarok」「Many Doors To Hell」で、1年半ぐらい前に書いた曲だった。その2曲をスタート地点として、過去のデモを聴き返して、ひとつの流れのあるアルバムの形にしていったんだ。すごく70年代的なアルバムになったと思う。



―『The Mandrake Project』のmandrake(曼陀羅華=チョウセンアサガオ)は幻覚作用があることで、ディープ・パープルの「Mandrake Root」(1968年)など60〜70年代のサイケデリック・カルチャーで頻繁に登場しましたが、最近はあまり聞かないですね。

ブルース:実際にはマンドレイクの伝説は聖書にまで遡るんだけどね。ラケルという女が姉と同じ男を好きになって、マンドレイクを使って男を誘惑するんだ(創世記30章。“恋なすび”という訳語が当てられている)。史上初のデートレイプ・ドラッグだよ。それ以降も薬草として使われてきたけど、過剰接収すると死に至ることもあるから、気を付けなければならないんだ。それにマンドレイクは絞首台の下に生えるという言い伝えもある。罪人が絞首刑になると、50%が反射反応で射精するというんだ。それで絞首台の下に生えたマンドレイクの根を地中から引き抜くと、人間そっくりだったといわれている。引き抜かれたときにマンドレイクが発する呻き声を人間が聞くと死ぬから、犬の尻尾に結わえ付けて抜いていたそうだよ。それで犬は死ぬけど、我々はマンドレイクを手に入れることが出来るんだ。


『The Mandrake Project』CD版デラックス・エディションの展開写真

―『The Mandrake Project』をアルバム・タイトルにしたのは、そんな言い伝えに基づくものでしょうか?

ブルース:いや、そういう訳ではないんだけどね。アルバムのタイトルは最後に決めたんだ。アルバムが完成した時点で、コミックの企画も進行していたけど、やはりタイトルがなかった。両方に共通するテーマが必要となって、政府の謎めいたプロジェクトの名前としてThe Mandrake Projectが浮かんだんだ。アルバム・ジャケットもエンブレムのような、ミステリアスなアートワークにしたかった。Photoshopは使いたくなかったんだ。俺はガキの頃、ブラック・サバスの『Black Sabbath』(1970年)のジャケットを何時間も、何日も凝視して暮らしてきた。これは一体何だろう?……ってね。それと同じ感情を与えたいんだ。『The Mandrake Project』とは何か、考えてもらいたい。

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