クジラ夜の街、満天のスポットライトの下で描いたファンタジー

クジラ夜の街(Photo by Makoto Nakagawa)

3月24日(日)に開催された「ツタロックフェス2024」。クジラ夜の街のライブレポートをお届けする。

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ステージの明かりが落ちると電飾が鮮やかに光り、アナウンスをきっかけにメンバーが登場した。まずは宮崎一晴(Vo,Gt)がマイクを握って「皆さま、長らくお待たせいたしました。これよりファンタジーを創るバンド・クジラ夜の街の演奏を始めます」と挨拶。「まあ、我々を一言で表すならば、未知との遭遇ですかね。素敵な体験を皆さまにお約束いたします」と宣誓して、テレビアニメ『闇芝居 十一期』のEDテーマ「マスカレードパレード」でスタート。妖艶でサイケデリックな雰囲気を作り上げて、宮崎が「さあ狂ってしまいましょう!」と声を上げる。続いて「指を鳴らせます?」と呼びかけて会場全体からフィンガースナップの心地いい音が鳴り、2曲目「裏終電・敵前逃亡同盟」で彼らが持つ特異な世界のさらに奥へと誘っていった。幻想的でロマンチック、ここではないどこかへ足を踏み入れているような感覚だった。

中盤に入り、宮崎が「今日、僕は大学の卒業式なんですよ」と大胆な告白をして、会場から驚きと歓声が起きた。「まあ無論、そんなものは蹴ってここに立っているんですけどね! 昨日は福岡でワンマンライブだったんですよ! 福岡ですよ? 飛行機で飛んできてさっき着いて、僕らだけじゃないですか? 会場のアンプを使ってるからね。自分たちの機材なんて一切ない。だけど僕たちはファンタジーを作るバンドで、魔法が使えますから。最高のロックを皆さまにお届けしたいと思っております」。そのまま流暢な語りは続く。「刺さる人に刺さればいいとか、そんな甘えたことは言いません。全員に刺します!」と言って、秦愛翔(Dr)のドラミングから「星に願いを」の演奏が始まると、宮崎は閉じた瞼をゆっくりと開き、感慨深そうに宙を見て声高らかに叫んだ。「まさか15歳の時に書いた曲を幕張でやれるなんて!」。佐伯隼也(Ba)のベース、山本薫(Gt)のギターが幕張メッセの高い天井よりも、さらに広大な星空を描いているようだった。宮崎少年が誰にも知られずひっそりと書いたこの曲が、7年の時を経て満天のスポットライトが注がれる下で歌う姿は、絶景そのものだ。曲中で宮崎がたまらず叫ぶ、「170にも満たないこの僕が、こんなにも広い会場で歌えているんだ。これをファンタジーと言わずして、何と言えばいいんだろう!」 

「時間旅行少女」の演奏が始まり、再び宮崎が大勢の観客に問いかける。「もしも時が戻せたら、あなたはどうする? 僕はこれまでと同じことを繰り返すよ。やり直したいことも、過去の過ちもたくさんあるけれど、1個でもズレたらここに立っていない気がするから」。彼らの音楽は現実から目を背けるわけではなく、同じ時代に生きて、年齢も出身も違う者同士が音楽で繋がっている奇跡のような現実を“ファンタジー”と呼んでいるようにも思えた。事実は小説よりも奇なり、なのだ。スキルフルでありアグレッシブな秦のドラムをきっかけに「夜間飛行少年」が始まり、最高の盛り上がりを作り上げて宮崎が言った。「残すはアウトロ、たった数十秒のアウトロ。それが終わったら大歓声を頼むよ」。佐伯と山本がラストの弦を弾き終える。秦が渾身の一打を叩き込み、手から離したドラムスティックがキレイな放物線を描いた。宮崎が全身に眩いスポットライトを浴びながら、両腕を広げて言った。「僕たちがロックスターだ!」。

<イベント情報>

Vポイント presents ツタロックフェス2024
公演日:2023年3月23日(土)、24日(日)
会場名:幕張メッセ国際展示場 9・ 10・ 11ホール
主催:CCCミュージックラボ(株)/ライブマスターズ(株)
企画:CCCミュージックラボ(株)
制作:ライブマスターズ(株)
運営:(株)ディスクガレージ
特別協賛:CCCMKホールディングス(株) / 三井住友カード株式会社
問い合わせ: https://cccmusiclab.com/tsutarock2024

<公式SNS>
Twitter:https://twitter.com/tsutarocklive
instagram:https://www.instagram.com/tsuta_rock_live_official/
Facebook:https://www.facebook.com/tsutarocklive/

Rolling Stone Japan 編集部

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