SUM 41が語る解散の経緯と30年の歩み、ポップパンクとメタルが共存する「最後の作品」

『Heaven :x: Hell』がダブルアルバムとなった背景

─わかりました。ここからはニューアルバムにしてSUM 41最後のスタジオアルバム『Heaven :x: Hell』について話を聞かせてください。初期のポップパンクスタイルと近年のメタリックなスタイルが共存するダブルアルバムというアイデアは、どこから生まれたものなんですか?

デイヴ:2006年に僕がバンドを脱退する前から、こういう2枚組アルバムのアイデアは出ていたんだ。でも、「それはありえないだろ?」ということでしばらく棚上げになっていたみたいなんだけど、今回のアルバムのデモを最初に聴いたとき、ヘヴィなタイプの曲も全部良かったし、ポップでパンキッシュな楽曲も全部良かった。それで、誰が言い出したってわけではないんだけど、「だったら2枚作ってリリースすればいいんじゃない?」っていう冗談めかした声が上がったことで、ようやく実現したんだ。



─例えば、それらスタイルの異なる楽曲群を厳選して1枚にまとめようとは思わなかった?

デイヴ:実は過去4、5枚のアルバムでもそうしようとしたんだけど、全然うまくいかなかったよ(笑)。それで、2つの異なるタイプの作品を作ることに決めて、ようやく完成に漕ぎ着くことができたよ。



─「Heaven」サイド(DISC 1)で試みたポップパンクスタイルですが、初期の頃と比べると非常に成熟した感が伝わります。

デイヴ:デリックが送ってくれたデモを聴いたとき、僕たち全員が同じように感じたと思うんだけど……初期の頃に作っていた曲に欠けていた何かが、今回はハマったような気がして。その欠けていた何かというのが、今言ってくれたように成熟の要素かもしれない。あと、曲作りに関しても以前よりも洗練されていて、ビート感やフレーズも過不足なく、あるべきものがあるべき場所に収まっている。個人的にも、今までやった曲の中で一番印象深いものもあったよ。きっと、一旦そういう要素から離れたことでいろんなエネルギーが充満されて、このタイミングにすべて放出されたからうまくいったんだと思うよ。

─その一方で、「Hell」サイド(DISC 2)でのメタリックな側面は、あなたがバンドに復帰して以降のスタイルをより煮詰めた、現時点での最高到達点ではないかと思いました。

デイヴ:そう感じてもらえるのも、きっとライトサイドとヘヴィサイドをそれぞれ別のディスクに分けたからであって、それぞれの側面の究極にまで行くことができたんだと思う。デリックはいつも「行けるところまで行こう!」という姿勢で、さらにそれを共同プロデューサーのマイク・グリーンがサポートしてくれた。そのおかげで「ここまで気持ちよくやれる」というレベルが以前と比べて遥かに高いものになったんだよ。あと、僕個人としては自宅の地下にスタジオを作ったので、朝起きたらコーヒーを飲んで、階下に降りて夕食の時間までギターを弾くことができた。これまで以上に快適に作業することができたのも、作品をより良いものへと仕上げるうえで大切な要素だったのかもね。



─僕は「You Wanted War」で聴ける、あなたのギターソロがお気に入りなんです。

デイヴ:ありがとう! この曲はすごく楽しかったな。

─ギターソロはあなたが中心となってプレイしていると思いますが、普段からどのようにしてソロパートを完成させているんですか?

デイヴ:いつもは1曲に対して8〜10パターンのソロを用意して、その中からいいところを抜き取ってひとつのソロ……僕は“マスター・ソロ”と呼んでいるんだけど、それを仕上げていくんだ、その出来上がったマスター・ソロを聴き返して「ここはもっとこうできるんじゃないか」と、バンドのアレンジ含めて調整しているんだ。



─「Heaven」サイドと「Hell」サイドはそれぞれ独立した作品のようにも映りますが、「Heaven」サイドのラストナンバー「Radio Silence」、そして「Hell」サイドのオープニングナンバー「Preparasi a Salire」というアルバム本編とは一風変わった2曲を挟むことで、2つのアルバムに自然なつながりを与えているように感じました。

デイヴ:デリックはそういうことを、レコーディング初期から考えていたと思う。どのバンドもやるべきことだと思うけど、ビジョンを持ってアルバムのレコーディングに臨むことが一番大事であって、そのビジョンというのは例えばアルバム全体の曲の流れだったり、どういう音を鳴らしたいか、どういうメッセージを伝えたいかということ。デリックはそれがしっかりできていて、今回に関しても彼はいい走順を選んだと思う。彼がこのアイデアを持ってきたとき、僕を含めメンバーもみんな「いいアイデアだ」と納得した。ビジョンを持つこと、そのビジョンを実際に持って進んでいくことは、すごく絶妙なバランスが必要で、デリックはそういう才能に長けているんだよ。

─今メッセージのお話が出たのでおききします。活動を30年続けたパンクロックバンドとして届ける今作のメッセージは、デイヴの目にはどう映りますか?

デイヴ:僕らがレコーディングした楽曲のメッセージはいつも、その時点での僕らの心境が写真のように記録されたものなんだ。さっき成熟というキーワードを挙げてくれたけど、今回のアルバムにはその成熟の部分がもっとも反映された歌詞になっているんじゃないかな。今作はかつてなかったくらい、心地よく制作に臨めたので、そういった面が成熟とともにしっかり表れていると思います。

─本作でもっとも興味深かったのが、オリジナルアルバムとして初めてカバー曲を採用したことです。ローリング・ストーンズのクラシックナンバー「Paint It Black」をカバーした理由は?

デイヴ:デリックはストーンズの大ファンで、たぶん100回くらいはライブを観ているんじゃないかな。彼はもちろん、バンドメンバーのみんなもストーンズの曲を演奏するのが好きで、中でも彼は特にこの曲を弾くのが大好きなこともあって最後に演っておきたいと思ったんじゃないかな。実は、あの曲のギターは全部デリックのプレイで、好きすぎるがあまりに全部演ってしまったんだろうね(笑)。弾きやすい曲なのでリハーサルではよく演奏しているんだけど、いずれライブでも披露してみたいよ。


Translated by Sachiko Yasue

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