「毎日スタジオに行くのが楽しみでね」と、75年のアルバム『ブロウ・バイ・ブロウ』で伝説のプロデューサーを迎えたギタリスト、ジェフ・ベックが当時の記憶をたどる。 3月8日に惜しくもこの世を去ったジョージ・マーティンとの収録初日、ジェフ・ベックはこのビートルズのプロデューサーが自身の音楽に良い影響を与えてくれると直感していた。しかしジェフ・ベック率いる3ピースバンドが『哀しみの恋人達』のカヴァーをレコーディングし終えた時点では、ジェフは手応えを感じていなかったという。「心を掴むようなレコーディングになってないと思ったんだ。でも昼飯を食べに行った時に、サウンドのクオリティに気付かされたんだ」こう彼は当時を思い返した。「"まるでこの部屋で弾いてるみたいなサウンドじゃないか。クリアですげぇ"って思ったんだ。初アルバムには満足してる」
アルバム『ブロウ・バイ・ブロウ』は、ジェフ・ベックとジョージ・マーティンにとって重要な作品となった。このジェフ初の完全インストゥルメンタル・アルバムは、75年に全米ポップ・チャートで4位を記録し、当時キャリアに行き詰まっていたジェフを再び軌道に乗せた。またビートルズ解散後のマーティンにとって、新たな一大プロジェクトの幕開けを意味した。「あんな才能ある人と取り組めたなんて・・・彼が僕にキャリアを与えてくれたんだ」とジェフは話す。「彼なしでは、どうなってたか誰にも分からない」