ジェイ・Z、人種問題とトランプに関してラップで言及

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ミーク・ミルの新曲「ホワッツ・フリー(featuring リック・ロス)」にゲスト出演したジェイ・Zは、鋭い視線と優れたラップスキルでトランプに関するカニエとの闘争の噂などを一喝した。

ジェイ・Zは彼ならではのやり方で、黒人たちに互いを敵視しないよう呼びかけてきた。しかしリスナーたちは、ヒップホップ界を代表する2人の黒人同士を焚きつけるという行動に出てしまった。
ミーク・ミルの新曲「ホワッツ・フリー(featuring リック・ロス)」にゲスト参加したジェイのヴァースがカニエ・ウエストを標的にしているという、ネット上で飛び交っている憶測はまったくの見当違いだ。アフリカン系アメリカ人たちに閉ざされた扉をいくつもこじ開けてきたラップ界のトップスターは、長年にわたって培ってきたその知恵の使い道を心得ている。「赤い帽子は目障りだ マイケルとプリンスの関係を俺とカニエに照らし合わせるな / お前がマイケルとプリンスのDNAを受け継いでいるなら、そんなことは言わずもがな」ジェイはそうラップする。

カニエとの関係について、ジェイは過去にも様々な場で慎重に説明してきたが、「What’s Free」で彼はウエストのトランプを支持する姿勢と、彼が頻繁に身につけている「Make Ameri-ca Great Again」の帽子について初めて言及してみせた。問題の箇所は以下のヴァースに続く形で登場する。「お前が買ったちんけな家と一緒にするな / 俺のはまるでリゾート地の別荘 お前ん家よりもずっとデカい / 俺の嫁は…そこまで言わせるんじゃねぇよ」ファンの多くはその「嫁」がウエストの妻であるキム・カーダシアンを指していると考えたが、実際には同ラインはトランプを標的にしていると思われる。今年1月、ジェイがCNNの「ヴァン・ジョーンズ・ショー」出演時に大統領を批判したことを受け、トランプは自身の就任後にアメリカにおける黒人の失業率が過去最低を記録したことをツイッター上で主張した。

「What’s Free」の真のテーマ、それは様々な形で今なお残る奴隷制度だ。同曲におけるジェイのヴァースは、過去に類を見ないほどストレートで内省的だ。ドライかつ情熱的に、ジェントリフィケーションといった社会問題を扱う場合と同様の配慮をもって、彼はストリーミングの再生回数にこだわる風潮をあざ笑ってみせる。一歩間違えれば批判に晒されるであろう繊細な内容を、彼は知性をもって表現してみせた。

一方でミーク・ミルは、閉所恐怖症的かつパーソナルなヴァースで応戦してみせている。腐敗したシステムの標的となった彼は、度重なる収監による精神状態の悪化を告白している。「屈しなかったこの俺を、奴らはとことん打ちのめそうとする / ブタ箱にぶち込み、頭がおかしくなるのを見届けようとしてやがる」どんな強力なゲストを迎えた曲であっても、このヴァースの破壊力が失われることはないだろう。

しかし同曲におけるリック・ロスのヴァースについては、もはや語る必要さえも感じられない。無意味な言葉を並べただけで、同曲の趣旨から完全に逸脱してしまている。世間を賑わせている6ix9ineの訴訟問題への言及、そして(Fワードが登場する)同性愛者に対する嫌悪を露わにしたラインは、同曲に収録されるべきではなかった。もしもエンジニアが人知れずロスのパートを削除していたなら、それはヒップホップに対する慈善行為だとみなされたに違いない。

Translated by Masaaki Yoshida

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