ケニー・オメガと棚橋弘至 「プロレス」を守る者はどちらなのか?

ケニー・オメガ(Photo by Shuya Nakano)

CHANGE THE WORLDの「公約」どおり、いまや世界のプロレスシーンに大きな影響を与える存在へと成長したケニー・オメガ。2019年の東京ドーム大会では、メインイベンターとして絶対エース・棚橋弘至を迎え撃つ。我々は当日、互いに信じる「プロレス」のあるべき姿を賭けた、信念の激突を目撃することになるだろう。

新日本プロレスに本格参戦を果たし、世界が注目するレスラーとなる以前から、ケニー・オメガはいつでも“ベスト・バウト・マシン”だった。会場の規模は言うに及ばず、そこにリングがあろうとなかろうと、さらには相手が男であろうと女であろうと(時には非生物でも!)、ケニーは常に全力で観客を沸かせる試合を続けてきた。

一方、棚橋弘至もまた、常に全力で観客を沸かせてきたレスラーの1人だ。プロレス人気の低迷期を知る者なら、棚橋がどれだけ苦労をして新日本、いやプロレス界全体の人気回復に努めたかも知っているはずだ。

かつて「カナダの路上王」を名乗った男と、伝統ある新日本プロレス生え抜きの「逸材」。生まれ育った環境は異なれど、プロレスに対する愛の大きさは変わらぬはず。彼らの試合を観た誰もが、そう思っていた。しかし、いつの間にか2人が目指す道は分かれてしまった。いや、実は最初から、彼らが求める「プロレス」の姿は異なっていたのかもしれない。

「品がない」という発言こそ、奴の品のなさを証明しているよ

─2019年1月4日に開催される、国内最大のプロレス興行「WRESTLE KINGDOM 13 in 東京ドーム」。そのメインイベントとなる棚橋弘至選手とのタイトルマッチは、ファンやマスコミの間で「イデオロギー闘争」と位置付けられています。具体的には、ケニー選手のファイトスタイルに対し、棚橋選手が「品がない」との評価を下したことが発端。IWGPヘビー級王者として、団体はもちろん、業界全体をリードする立場にあるケニー選手にとってあの発言は、やはり聞き捨てならないものがあったと思うのですが。

ケニー:まぁ、棚橋サンの気持ちもわかるんだよ。俺みたいなタイプのレスラーがトップになっていることに対して、かなり悔しい思いをしているに違いないからね。ただし、それを「品がない」という言葉にしてしまうのはどうなんだろう。それこそ品がないことだと思わないかい?

─プロレスファンとしても、あの発言には正直なところ違和感をおぼえました。過去、さまざまな団体で活躍してきたケニー選手を否定することは、すなわち新日本プロレス以外のスタイルを否定するニュアンスすら含まれているようにも受け取れましたし。

ケニー:そこが大きな問題だよね。結局、彼にとっては新日本プロレスがすべてであり、さらに言えば、そのエースである自分のスタイルだけが正しいと思い込んでいるんだ。

──確かに、棚橋選手には以前から「俺になれ」的なスタンスがありますよね。とはいえ、新日本プロレスの低迷期を支え、現在のブームにつなげた立役者の一人であることは間違いないわけですから、そうした自負を持つのは当然かもしれません。

ケニー:もちろん、その功績は評価に値するよ。新日本のダークエイジを救ったのは間違いなく棚橋サンだと思う。でも、新日本プロレスが今のような盛り上がりをみせるきっかけを直接つくったのは、オカダ(・カズチカ)であり内藤(哲也)だよね。そして現在、世界に通用する試合を魅せているのは、このケニー・オメガなんだ。

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