ローリングストーン誌が選ぶ「ベスト・ミュージック・ビデオ」トップ10

ローリングストーン誌が選ぶ「ベストミュージックビデオ」トップ10


3位:Anderson .Paak「Til It’s Over」(a.k.a. ‘Welcome Home’)

監督:スパイク・ジョーンズ
そう、正確にいうと「Welcome Home」は、AppleのSiri搭載ホームスピーカーHomePod用に造られた4分間のCM。だが、ドレイクの「Hotline Bling」に資金提供したのも、何を隠そうAppleだった。ミュージックビデオ界のベテラン、スパイク・ジョーンズが監督し、Anderson .Paakの曲を全面にフィーチャリングした「Welcome Home」の映像は、壮大なコンセプトと視覚効果に富んだ90年代に一気に引き戻してくれる。FW Twigsが自宅のアパートを引き伸ばして現れる色彩のラインは、さながらミシェル・コンドリー風の幾何学的なワンダーランドか、ジャミロクワイの「ヴァーチャル・インサニティ」の振り付け部屋を思い起こさせる。

2位:Childish Gambino「This is America」

監督:ヒロ・ムライ
ラッパー兼俳優兼作家の売れっ子ドナルド・グローヴァーと、『アトランタ』の監督ヒロ・ムライが底なし沼のような才能を駆使して、世界を魅了する最高のプロテスト作品をひねり出した。ラッパーの言葉遊びの手法で映像を自在に操り、グランドマスター・メリー・メル、アイスキューブ、チャックD、ケンドリック・ラマーたちが歌ってきた“アメリカ像”を可視化した。ひとつ例を挙げれば、裏庭で白馬に乗る人物は、おそらくラップ界で絶大な支持を得るミルトン・ウィリアム・クーパーの著書にちなんだものか。カオスの中で踊り狂うグローヴァーの姿は、銃規制から政府の横行、資本主義と黒人社会の関係性に対する一種の声明文ともとれる。「そう、このビデオは時代の変化が交わるクレイジーな交差点――それが楽曲とビデオ全体の前提になっている」とムライは、ニューヨークタイムス誌のインタビューで語っている。「暴力にさえも、悲しいかな、漫画みたいな一面がある。『ルーニー・テューンズ』の原理はどこにでも転がっているんだ。明らかに僕らはすごく挑発的な映像を扱っている。だから、完全に賭けに出たってわけさ」C.W.

1位:ザ・カーターズ「エイプシット」

監督:リッキー・サイズ
2016年、ビヨンセは全曲映像付きのアルバム『レモネード』をリリースした。2017年、今度はジェイ・Zが、『4:44』のほぼ全曲でミュージックビデオをリリースした。夫婦コラボとなったアルバム『エヴリシング・イズ・ラヴ』のビデオはたったの1本。だが「エイプシット」は、絵画に関する芸術史論を総動員したくらい内容の濃い作品だ。実のところ、このビデオがリリースされた数日後、芸術史の専門家の何人かが、映像に登場する各場面に秘められた意味を解明しようと試みた。2人はルーブル美術館を貸し切って、白人ヨーロッパ芸術の象徴ともいうべき建造物を、黒人の音楽、黒人の動き、黒人の声で満たした。サモトラケのニケの前で、ビヨンセはステファン・ロランドとアレクシ・マビーユの衣装に身を包み、ミーゴスのビートに乗って賃金平等を歌う。ダイブやGIF動画じみた動きには、思わずモナリザのような微笑みを漏らしてしまうかもしれないが、アポロンの間の入り口で立ち尽くすときのような衝撃に圧倒される、そんな何かが「エイプシット」にはある。コンセプトは、今年最大の自慢大会――だが、最も印象的で、最も芸術的な自画自賛だ。E.D.

Translated by Akiko Kato

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