ダニエル役の俳優が語る、80年代人気映画『ベスト・キッド』の知られざる秘話

ー東海岸のアクセントはどうやって身につけたんですか? それとも地ですか?

あれは地だよ(マッチオはニューヨーク出身)。ちょっと強調したけどね。というのも、脚本を読んでいて(ダニエルが)引き下がるタイプじゃないと気づいたんだ。中学や高校の時によくいる、一人になるのは嫌、そして取り残されるのは嫌だけどけんかっ早い生意気な子たちを何人か思い浮かべたよ。

ー結局のところ、ロングアイランドのアクセントもニュージャージーのアクセントも、そう大差ないということですね。

同じだよ。川をいくつか挟んでるだけさ。

ー前にブルース・スプリングスティーンがビリー・ジョエルを紹介する時にも言ってました。昔は同じひとつの大陸だったんだって。

その通りだ。いいとこついてるね。

ー『ベスト・キッド』を復活させるということは、あなたにとっては賭けだったと思います。ちゃんとしたものにしなくては、というプレッシャーもあったと思うのですが。

今回が他と違うのは、ひとつはタイミング。僕としては、企画にイエスと言ってから2年経ったら、もう無理だろうなという風に感じていた。だけどそれ以上に、ジョン(・ハーウィッツ)、ジョッシュ(・ヒールド)、それにヘイデン(・シュロスバーグ)、この3人のクリエイターが『ベスト・キッド』の超大ファンでね。僕よりも映画のことをよく知っている。彼らがどんな子ども時代を過ごしてきたかがよく分かった。彼らにとっては、聖杯を手にしたような気分なんだよ。ものすごい尊敬の念を払っている。でも同時に、『Harold & Kumar(原題)』や『オフロでGo!!!!! タイムマシンはジェット式』を観て育った世代だから、いまどきのコメディの作り方も心得ている。この3人ならきっと、現代のティーンの言葉づかいと過去への郷愁をうまく融合して、全く新しいものを作ってくれる気がした。だけどいざ飛び込んでみると、プールの水は思いのほか冷たくて、しかも深かった。ビリー・ザブカも同じ。大変だったよ。

ー以前からあなたの代表的な役として定着していましたが、これでさらに確立しました。この点はどう思いますか?

自分を型にはめるんじゃないかって? そういうことはあまり考えなかったね。ダニエルは前とは違う人間だ。35年分大人になった。同じ地球にいるけれど、世界はずいぶん変わった。物語の雰囲気もいくぶん違っている。もっとも、当時の『ベスト・キッド』が持っていた迫力などはそのままだけどね。もちろん中には『おいおい、あいつまだこの役やるのかよ』っていう人もいるだろう。それでもかまわない。今の僕は『DEUCE/ポルノストリートin NY』みたいなドラマとうまくバランスを保ちながら、来るものは拒まずという姿勢なんだ。

ードラマの出演前に、映画をもう一度見直しましたか?

1作目を見たよ。見たけど、いくつか思い出すことがあった以外は、今回の役作りには役に立たなかったな。準備はできているから、あとは微調整するだけで良かった。『ベスト・キッド』の面白い点は、主人公の少年と同じ道を歩んでいるということかな。まるでカメラが少年の肩についていて、どの場面でもダニエル・ラルーソーの視点で物語を体験できる。自分の子どもに映画を見せたとき、15年前かな、突然自分がミヤギの視点に立ったことに気づいた。目の前には聞き分けのない少年がいて、自分にとっては彼よりもミヤギのほうが興味深く思えた。同じ物語を新しい視点から見ることができたんだ。それがドラマで活かされてるよ。

Translated by Akiko Kato

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