フジロックフェスティバル、「フェス飯」文化の誕生を担った男たち

名物「もち豚」誕生秘話

小川 ここ10年くらいでフードフェスも相当盛り上がってるじゃない? それでケータリングカー的な飲食店のクオリティもすごく伸びてるんじゃないかって思うんだけど。

鯉沼 レベルは上がってきてると思う。でも、これはあまり言いたくないんだけど──フジロックに関して言えば、結局、ケータリングカーの味のレベルってある一定以上はいかないんですよ。

ーそれはなぜですか?

小川 ケータリングカーだと必然的にメニューを簡易的に作れるものにしたり、ある程度の利益を出すことを考えたりしたコスト管理が求められるから。ようするに、コストパフォーマンスということですよね。そうすると、食材のランクや手間も含めて限界があるんです。一方で、たとえば東京の路面で商売している飲食店はやっぱり味が美味しくなければお客さんがシビアに来てくれないわけですよ。当然、味のレベルはケータリングカーよりも上になりますよね。だから、フジロックにもそんなお店にもっといっぱい出店してもらいたいんです。そういう考えがあるから、サービスエリアで出店しているようなお店にはご遠慮いただいていて。僕はフジロックでいかに美味しいものを提供できるか、ということしか考えてないですね。あと、バラエティに富んだメニューをどれだけ出せるか。

ー実際に「え、こんなメニューを提供してるんだ!」って驚かされる店もあります。

鯉沼 そうそう。ここ数年はミシュランの星を獲得している京都の割烹料理屋さんが出店してくれていたり。そこは鱧にゅうめんとかを出してくれていて。それは1000円するけど、味は間違いないので。もちろん、ミシュランの星を持ってるからいい店というわけではないですけどね。


©宇宙大使☆スター

ーあと、フジロックと言えば大名物の越後のもち豚みたいなところがありますよね。あの串焼きを食べると多くの人が「今年もフジロックに来れた」と実感するという。

鯉沼 あれは単純に地元の方が出店してもち豚の串焼きを出したらバカ売れしたという、それだけのことから始まったんですよ。3年目に苗場に会場が移って、なるべく地元の名産を飲食出店でも出したいなということになって。そこで、越後のもち豚が一つのブランドとしてずっと地元にあったと。あとは、もち豚の串焼きがこれだけフジロックの名物になったのは一種のフィンガーフードだったのも大きな要因だと思いますね。

小川 それはあるよね。食べやすいという。

鯉沼 そうそう。片手にビールを持ちながら食べられるから。ケバブもフィンガーフードだから売れるんですよ。最初はどれだけ売れるかわからなかったから、生肉を焼いて出してたんです。だから余計に美味かったの。

小川 冷凍じゃなかったんだ。

鯉沼 そう、鮮度のいい生肉を焼いていた。そりゃ美味いっすよ。気がついたらビックリするくらい売れるようになって。そこから地元の飲食の人たちから「自分ももち豚の串焼きで出店したい!」って言われるようになった。「二番煎じはやめてください」ってお願いしたんですけど、そこから2、3年はもち豚丼とか、派生したメニューが多くなっちゃったんですよ。それで、「もっともち豚以外に地元の名産を売り出すアイデアを出してください」とお願いして。地元の人たちもそれに応えてくれて、「うちはこれを売りたい」「だったらうちはこれを売る」という意識が生まれ始めたんです。お客さんもそれに興味を持ってくれてちゃんと売れるようになった流れはいいなと思いますね。

ーちなみにもち豚の次に名物的に売れてるメニューはなんですか?

小川 タイラーメン?

鯉沼 タイラーメンも一時期すごく流行ったんですけど、それを僕が抑えたんですよ(笑)。流行りすぎたらイヤだと思って。で、東京にお店を持っているタイ料理屋さんが出店してくれるようになって、そこのタイカレーがすごく美味くて! お客さんも食いついてくれたんです。

ーたとえば今、世間ではタピオカが狂ったように流行ってるじゃないですか。

鯉沼 だから、僕はそういうメニューはフジロックで出したくないんですよね。ホットクとかも「死んでも出すか!」と思ってます(笑)。やっぱり一つのメニューが流行りだすと面白くなくなるんですよ。

ー食もフジロックの文化を形作る重要な一つになってますしね。

鯉沼 毎年次なるヒットが出てくるといいなと思ってます。

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©宇宙大使☆スター

FUJI ROCK FESTIVAL’19
期間:2019年7月26日(金)、27日(土)、28日(日)
会場: 新潟県 湯沢町 苗場スキー場
http://www.fujirockfestival.com/

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