夏帆とシム・ウンギョンが演じた等身大の孤独と寂しさ

他の共演者の「怪演」というべき存在感

─他の共演者の皆さんも「怪演」というべき存在感を放っていましたよね。

ウンギョン:黒田大輔さん演じる、砂田の引きこもりの兄は、劇場で観ていて圧倒されました(笑)。こんな自然に、素晴らしくキモチワルイ芝居をする人は観たことがなかったなって。

夏帆:あははは! 現場で一緒にお芝居しているときは「こ、こわ!」って思ったんですけど(笑)、完成したシーンを観たらすごく笑えて。試写会でも大爆笑が起きていましたね。

─砂田は小さい頃に家族から引き離されて暮らしたことで、感情をうまく外に出せずにいるんですよね。

夏帆:だからこそ彼女には清浦が「必要」だったんです。本当は清浦みたいに自由に生きたいけど、そうすることが出来なくて、「こうありたい」という思いを彼女に投影させていたと思うんですよね。

今回、清浦以外にも砂田の周りには強烈なキャラクターがたくさん出てきますけど、実は一番狂っているのは砂田なんじゃないかって(笑)。「私、器用に生きてますけど?」というポーズをとっていますけど、ものすごく不器用だし、余計なことを言うし。一緒に仕事をしている人との飲み会でも、余計なことを言って周りに気を使わせて。すごく人間臭い人物だなと思うし、そこが私は好きですね。

─「私を好きって人、あんまり好きじゃない」と言うセリフも、とても印象的でした。

夏帆:自分のことが嫌いで、受け入れられないんですよね。それは私もよく分かります。本当はもっと大人になっているはずだったし、もっと何かを成し遂げていられるはずだったのに、それに追いついていない自分がいて。理想が高い分、そんな自分が許せない。だからこそ、そんな自分のことを「好き」という人を信用できないみたいな、そういう痛々しいことを言ってしまうわけですよね(笑)。


©2019「ブルーアワーにぶっ飛ばす」製作委員会

─「こんな自分を好きになるなんて、大した人じゃない」って思ってしまう。

夏帆:そうなんです(笑)。でも、そんな自分を受け入れて、向き合っていかなければいけないなって。どんなに憧れても、他の誰かになり変われるわけではないから、そこは自分とうまく折り合いをつけてやっていかなきゃって、ここ2、3年くらいはずっと思っていて。そういう意味でもこの作品は、自分にとってドンピシャだったなって。このタイミングで、砂田を演じられたのはすごく救われました。

─砂田はいわゆる「アラサー」で、仕事や結婚、出産など社会的に様々なプレッシャーがかかる年代だと思うのですが、そのあたりは演じてみてどう思いましたか?

夏帆:ちょっと前まで私もすごく考えていましたね、そういうことを。周りもどんどん変わっていくし、同級生が結婚して子供を産んでとか、25歳くらいから急に増えてきて。「自分はこの先、仕事をしていく上でどうしたらいいんだろう?」「そもそも続けていけるのか?」「何か一つでも結果を残さなきゃ」って。

今は順調に仕事をさせていただいていますが、そうじゃない時に「この先どうしよう」って。なんだか色んなことを考えていた時期もあったんですけど、今はあまり年齢に縛られなくなりました。特に私は10代の頃から仕事をしているというのもあって、感覚が少しずれているのかもしれないですけど。何れにしても、一度は立ち止まって考える時期ではあるのかもしれないですね。

─韓国でも、そういう社会的なプレッシャーみたいなものってありますか?

ウンギョン:どうだろう。以前に比べたら、「女性はこうあるべき」みたいなプレッシャーは減ってきたような気がしますね。ただ、私自身はまだ結婚とか全然考えてないかも……。

夏帆:そうだよね、25でしょ?

ウンギョン:もっともっと先の話だと思うし、結婚するかどうかもよく分からない。個人的にはそんなに心配していなくて。未来のことをあれこれ考えだすと、不安になっちゃうから。今やるべきことをちゃんとやろうと思ってますね。そうすれば未来も変わっていくでしょうし。

夏帆:「30までに結婚するべき」みたいなの、早くなくなるといいよね(笑)。

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