米出版界の大物、性的虐待者を黙らせ権力者にすり寄る姑息な「手口」

ハワード氏の実態が明らかに

ところで、いったいハワード氏とは何者なのだろう? そもそもなぜ彼はファロー氏の著書をこれほど気に病んでいるのか? ハワード氏はAmerican Media社(以下、AMI)の副社長兼チーフ・コンテンツオフィサー。同社はUS Weekly誌やIn Touch誌の他、National Enquirer紙といった数々のタブロイド紙を抱えている。ファロー氏の記事で報じられている男性の権力者らが性的虐待の被害者を黙らせ、信用を貶め、脅しをかけようとする実態は大半がAMIでの出来事だ。特に、関係者に対する告発的な情報を含むネタを「手に入れて握りつぶす(Catch and Kill)」という手法にスポットが当てられている。

2017年、ファロー氏はNew Yorker誌の記事で、いまや評判がた落ちのハリウッドの大物ハーヴェイ・ワインスタインから性的虐待を受けたという女優のローズ・マッゴーワンの主張に関し、ハワード氏がマッゴーワンの信頼を落とそうとして記者を派遣したと報じた。2016年、ハワード氏はワインスタイン氏に宛てたメールの中で、自社の記者の1人がロバート・ロドリゲス監督の元妻にインタビューしたこと、ロドリゲス監督は元妻と離婚してしばらくマッゴーワンと交際していたこと、インタビューでマッゴーワンの評判を貶めることのできる情報をつかんだらしいことを伝えた。「朗報がある……彼女は最終的にローズをボロクソに言ったよ」と、ハワード氏はインタビューについて、ワインスタインにメールで語っている。

ハワード氏はNew Yorker誌に宛てた声明の中で、AMIは当時ワインスタイン氏と制作協定(現在は解約)を結んでいたため、信用調査の一環としてワインスタイン氏の情報収集を記者に指示したのだ、と述べた。ハワード氏は「ワインスタイン氏にオフレコの情報を流して」報道の規範に違反したことはない、と主張。「ワインスタイン氏は何度となくAMIの媒体に自分に都合のいい記事や告発者に否定的な記事を書かせようとしたが、自分はその都度抵抗した」と述べた。

Translated by Akiko Kato

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