「何でオーディエンスの頭を蹴っ飛ばしたの?」(アイリッシュ)アームストロング:どうだろうね、途方に暮れてるような感じだったな。ライブの規模は大きくなり、オーディエンスからの反響もすごかった。でも俺にとって本当に大事なのは、リアルであり続けることだったんだ。今思うと、そのことにとらわれ過ぎてたのかもしれない。何があってもルーツを見失ってはいけないと、俺はまるで強迫観念のように自分に言い聞かせてた。その次に出た『インソムニアック』がすごくダークなのは、そういう理由なんだ。何もかもに対して、感覚がすっかり麻痺してしまってたんだよ。
アイリッシュ:(次回作のことは)私もプレッシャーを感じてる。私って音楽を楽しんでるのかなって、疑問に思った時期があったの。ツアーがあまりに長く続いたせいでね。ライブのことを言ってるんじゃないの、それってむしろ一番好きな部分だから。でも移動ばっかりで友達にも会えないし、食べ物はまずいし、寒いバスでヨーロッパ中を巡って、やっと帰って来たと思ったらみんなとの間にちょっとズレが生まれてたりするの。ちゃんと楽しめたのは前回のツアーが初めてだった。自分がすごいことを経験してるんだって、やっと実感し始めたの。
アームストロング:わかるよ。ツアーで1年くらい家を空けて、帰って来たら誰かが結婚してたり、状況がいろいろと変わってるんだよな。そういう生活の中で正気を保つには、優れたチームに支えてもらうことと、気晴らしの手段を見つけることだよ。
アイリッシュ:あのさ、これって聞いちゃっていいのかわかんないんだけど、オーディエンスの頭を蹴っとばしたっていう話があったでしょ? 何でそうなったの?
アームストロング:人の頭を蹴っただって? 俺、そんなことしたっけ?
アイリッシュ:動画があるんだけど、すごく強烈なの。フロアで何かしらやってる客に、ステージから降りて来たあなたが飛びかかるの。マジでハードで、本物のギャングスタだと思った。一体何があったのかなと思って。
アームストロング:多分ヤジかなんか飛ばされて、口論になったんじゃないかな。そのうちに堪忍袋の尾が切れて、そいつに飛びかかっちまったんだろうね。悪いことは言わない、やめときな。
アイリッシュ:もちろんやらないけど、あれはドープだよ。それに、私のオーディエンスは全然タイプが違うしね。
アームストロング:君のショーを観た時、同じエネルギーを感じたよ。素晴らしいライブだった。客がみんな一緒に歌ってて、イギリスのサッカーの試合みたいだった。でも歌ってる内容はダークで、まるで大聖堂にいるみたいに感じたよ。
Photo by Brad Ogbonna for Rolling Stoneアイリッシュ: Hair by Tammy Yi at Exclusive Artists Makeup by Rob Rumseyアームストロング: Grooming by Stanton Duke Snyder