CRCK/LCKS×ラブリーサマーちゃん 音楽と自分自身を信じるための方法

左から小西遼、ラブリーサマーちゃん、小田朋美(Photo by Takanori Kuroda)



自分が言いたいことより、言われたいことを書こう

─そういえば、クラクラはこの日のライブからフォーメーションが変わりましたよね。

小西:そうです。俺と小田のツーフロントから、小田のワンフロントにしました。

小田:今のラブサマちゃんの話で言うと、私は元々どちらかというとお客さんに萎縮してしまうタイプで。いわゆるディーヴァ系というか、場の雰囲気を自分のペースに持っていけるパワーを持つボーカリストでは全然ないんです。もちろんそれは経験値の浅さもあるとは思うんだけど、性格的な部分もあるなと思っていて。なのでクラクラをやる時も、自分が全面に出る感じじゃないなと。だからこれまで小西とツーフロントだったし、みんなの顔を見ながら演奏できるフォーメーションだったんです。

でも、ここ最近はずっとメンバーからもスタッフからも「小田がフロントでやった方がいいんじゃない?」と言われていて。やってみたら景色が全然違うんですよね。真ん中で歌うってすごいことだなって思いました。それをラブサマちゃんは最初からずっとやってるわけだからさ。すごいな、萎縮してる場合じゃないなって。

ラブサマ:でもあの日、私は自分のバンド・メンバーに今の話と全く同じことをLINEで送ってました。ちょっと読んでいいですか? 「(読み上げる)私の愛している音楽がかっこいいということを、もっと説得力(演奏力なのでしょうか、なんなのでしょうか)を持って演奏しなくてはならない。自分の愛すること、やりたいことを最大限表現することが、いかに素晴らしいか。クラクラを見てくらってしまいました」」だって。ヒャハハハ、読むんじゃなかった恥ずかしい(笑)。

─(笑)。お互いのカッコよさについて、同じように考えていたんですね。

ラブサマ:確かにクラクラは「バカテク集団」って言われてますけど、でも「上手いからカッコいい」ということではなくて、自分がカッコいいと思う音楽をやるにあたって求められる演奏力、必要な演奏力を身につけ、それを鳴らしているという必然性があるんですよね。で、それに到着するまでの過程を感じさせるような、気迫のある演奏に私はくらったんです。



CRCK/LCKS、10月19日の東京・渋谷WWW X公演にて(Photo by Kana Tarumi)

─今、話に出てきた「超絶技巧」「バカテク集団」という形容詞、確かにクラクラの場合は先行しがちですけど、でも今作『Temporary』はまず「歌モノポップス」としての素晴らしさが前面にフィーチャーされていると僕は感じたんですよね。そのあたりのポップセンスが、ラブサマちゃんのポップセンスとも共鳴し合っているというか。

ラブサマ:そう! 「春うらら」とかメッチャいい曲じゃないですか? クラクラがただの「バカテク集団」じゃない理由ってたくさんあるんですけど、一番にいえるのは「歌詞とメロディと歌心」だと思うんですよ。この曲の歌詞、読んでみて下さいよ。“春うらら”で、“毛むくじゃら”からの“夏きらら”ですよ? こういう詞ってありですか!?

小田:あははは!

ラブサマ:“夏きらら”なんて言葉、ないじゃないですか。例えば井上陽水の「少年時代」に出てくる“風あざみ”というフレーズ。こんな言葉、実際はないのに、風あざみっていうのが何なのか、なんとなく伝わるじゃないですか。意味不明な言葉が「うん、わかる」ってなるのは、メロディと歌い回しと言葉が一つになっているからで。

どうせメロディに言葉を乗せるなら、それ単体で意味が成立する言葉より“風あざみ”みたいなマジックが起きた方がいいと思うんですよ。そこで“夏きらら”、”毛むくじゃら”なんですけど、これってメロディと言葉と小田さんの歌声と編曲が混じり合った時のマジックをすごく感じさせるんです。

小田:嬉しい。



ラブサマ:あと、「KISS」もすごい好き。この歌詞ってものすごくポジティブじゃないですか。サビで“不安な顔しないでさ”とか。それを聞いて、「そんなこと言われても……」って思う人も中にはいると思う。人に言う言葉として、”不安な顔してても良いよ”って言うことの方が、容易いと思います。でもクラクラは、そこをあえて言い切りというか断定してる。すごく勇気の要ることだと思うんですよね。それが、あの日ライブで弱った心にダイレクトに響いて泣けてきて。

小田:あの曲で、ああやって言い切ることに対しての抵抗はあった。「それだけの自信が自分にあるのか?」「人を励ます資格があるのか?」という気持ちはすごくあって、「KISS」を最初にライブでやったときは今までで一番緊張したんだよね。

ラブサマ:やっぱりそうだったんですね。確かに、世の中には何にも考えずに「大丈夫だよ」とか簡単にいう人もいるし、そういう曲もあるじゃないですか。オダトモさんの歌詞には「色々あるけど、でもきっと大丈夫だよ」っていう、そこに思い至るまでのプロセスをちゃんと感じさせてくれるから説得力があるんだと思う。

小田:私、光GENJIの「勇気100%」がすごく好きなんですよ。“がっかりして めそめそして どうしたんだい”、“そうさ勇気100% もうやりきるしかないさ”とか、めちゃくちゃ言われたいじゃないですか(笑)。ただ、自分がそんな歌詞を書くなんてことは、今まで想像もしていなかったんだけど、よくよく考えたら「私、やっぱりそれ言われたいぞ」ってなって。それで『Temporary』を作るときに、「自分が言いたいことより、言われたいことを書こう」という気持ちが強まったんですよね。

─「自分が言いたいことより、言われたいことを書く」って重要なポイントかもしれないですね。

小田:ちょうどその頃、田中泰延さんの『読みたいことを、書けばいい。』を読んで、ストンと腑に落ちたというのもあります。もちろん、今までクラクラの歌詞に「自分の言いたいことを詰め込もう」とだけ思っていたわけではないんですけど、今回はとにかく「自分が言われたいことを書こう」と。「誰かを励ましたい」というよりは、「自分を励ましたい」というか。

でも、理想というか願望だけになってもお花畑なので(笑)、実際今まで自分が言われて本当に嬉しかったこととか、言われた当時は素直に受け取れなかったけど今になってその人がそう言った気持ちがちょっと分かるようになったかな?というような言葉も取り込みつつ作りました。

─ラブサマちゃんも、歌詞について変わってきた部分はありますか?

ラブサマ:今年4月にリリースした「ミレニアム」という曲は、最近の若い人たちの思考について考えながら書きましたけど、それまでは自分が辛いとか、自分の周りが崩壊していってるみたいなことばっかり書いていましたね。今は段々変わってきていて、新しくアルバムを作っていますが、その中ではかなり社会のことについて歌うようになってしまいました。



─それは、キャリアや年齢的なものも関係してる?

ラブサマ:いや、なんかもう普通に生きてて物騒すぎないですか? 痛ましい事件とか去年あたりから多くて、それに目をつぶれなくなってきたというか。

小西:なんか、膿が噴出してきてる感じはするよね。日本の惨状……化けの皮が剥がれてきた感がすごすぎて、もう気づかないフリはできない。

ラブサマ:そうなんですよね。

─ラブサマちゃんの、新たな歌詞の方向性も楽しみです。最後に、CRCK/LCKSはワンマン公演が12月18日にTSUTAYA O-EASTであります。

小西:実はクラクラ、都内で初のワンマンなんですよ。その日だけの仕掛けなんかも結構、用意していて。同日にリリースされる新作『Temporary2』の内容にも関係してくることなので、あまりネタバレしたくないんだけど。

小田:クラクラはこれまで手探りでいろんなことに挑戦してきて、ときには迷いが生じたこともあったと思うんですけど、やっと最近「これが私たちのカッコよさだ」と言えるところが見つかってきている気がしていて。それをワンマンでぶつけられたらいいなと思っています。

ラブサマ:楽しみ! 私は去年、バンドメンバーがガラッと変わったのですが、それでライブをやっていくうちにどんどん成熟してきているのを感じています。クラクラのライブを観て、もっと練習しなきゃと思いましたし……。

小西:いやでも、俺もサックスにファズかましたいって思ったよ。

ラブサマ:それ絶対かっこいい!


Photo by Takanori Kuroda



〈CRCK/LCKS〉


1stフルアルバム『Temporary』リリースツアーファイナル
日時:2019年12月18日(水)
会場:渋谷 TSUTAYA O-EAST
出演:CRCK/LCKS(ワンマン)
前売り:3,500円 当日:4,000円
開場:18:30 開演:19:30
e+:https://eplus.jp/sf/detail/2839980001-P0030002P021001?P1=1221


『Temporary vol.2』
2019年12月18日(水)リリース

CRCK/LCKS公式サイト:
https://crcklcks.tumblr.com/


〈ラブリーサマーちゃん〉

新曲「LSC2000/サンタクロースにお願い」
配信・会場限定リリース
https://linkco.re/amp/UxRHAMmd

VENUS PETER presents「MDC! Vol.2」
日時:2019年12月22日(日)
場所:新代田FEVER
出演:VENUS PETER/ラブリーサマーちゃん

武蔵野音楽祭
日時:2020年1月18日(土)
場所:吉祥寺SHUFFLE
出演:miida/ラブリーサマーちゃん
オープニングゲスト:初恋モーテル

ラブリーサマーちゃん公式サイト:
https://www.lovelysummerchan.com/

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