Instagramで話題を集めた「肛門日光浴」とは?

「肛門日光浴」の出どころ

この投稿にはエセ科学的でおバカな健康法にありがちな専門用語や、甚だしい文化の盗用、一糸まとわぬ姿の女性の写真など、即座に拡散するために必要なあらゆる要素がほぼ全て含まれている。だが競争力が激化するソーシャルメディアの世界では、誰が見ても明らかな健康ネタが必ずしも世間の注目を集めるとは限らない。今回の投稿が拡散したのも、@sisterofonlineというTwitterユーザーが「ケツから日光を取り入れている人々を発見」という見出し付きでスクリーンショットを投稿したからだ。健康系インフルエンサーのトロイ・ケイシーも、Instagramに似たような投稿をして会陰日光浴を推奨したが、メディアはこれを「肛門日光浴」と謳い、実際に流行っている健康法として紹介した。同時に、ニューヨーク・ポスト紙がこれを「インフルエンサーが勧める最新おバカ健康法」と呼んだように、(バカにされても仕方ない)健康業界を批判する絶好の機会ともなった。

とはいえ、やはり疑問もある。いいねを渇望する少数の健康インフルエンサー以外に、本当にこれを実践している人はいるのだろうか? (白人の)健康インフルエンサーたちが力説するように、本当に伝統的な東洋医学に基づいているのだろうか?

会陰日光浴に治療的効果があるという説は、気研究所の創立者スティーヴン・T・チャン氏が1986年に出版した著書『The Tao of Sexology(原題)』から来ているようだ。Meaganの投稿にも登場するインフルエンサー@ra_of_earthも、この本のスクリーンショットを投稿している。この本が推奨しているのは「太陽崇拝エクササイズ」。「太陽には優れた殺菌効果があり、太陽の光を浴びることで肛門や性器周辺を健康に保ち、細菌から守ることができる。また痔の治療にも優れている」と謳い、前かがみになって臀部をさらけ出す人物の挿絵までついている。

我々のコメント取材依頼に対し、チャン氏と気研究所からまだ返答はないが、このエクササイズを検証して支持する研究者は間違いなく多くはない。婦人科医でイェール大学医学部で教鞭も執っているメアリー・ジェーン・ミンキン医学博士曰く、肛門付近には何十億という細菌がいるものの、「どんなに日光を当てても殺菌されることはありません。人間の多くは細菌類と上手に共存して生活していますから(必ずしも殺菌する必要もありません)」 むしろ、この部分に日光を当てることは危険になり得る、と博士は付け加えた。「人体の中でも、この部分の組織は特にデリケートな組織なんです」と、ローリングストーン誌に語った。「アレルギー反応が出るかもしれない部分にわざわざ何かする理由があるでしょうか?」

Translated by Akiko Kato

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