米トランプ政権のコロナ対策、身内の共和党も不安視

騒ぎの元凶を辿ると大統領に行き着くだろう。コロナウイルスの現状を直視しようとせず、自分の耳をふさぎ、政府はしっかり対処しているから全てはOKだと繰り返している。ウイルスはそのうちに「姿を消す」だろうなどという彼の考えは、過去のパンデミックの脅威の推移を根拠としているのだろうが、それは当時の政府とCDCが一致団結して感染拡大をある程度食い止めたからだ。現トランプ政権が危機に対する楽観的な見方を示そうとやっきになっている一方で、関係当局は現実との闘いを余儀なくされている。

さらに問題なのは、トランプ大統領がCDCをはじめ米国立衛生研究や米国際開発庁の予算を削減したにもかかわらず、これら機関にパンデミックの対応を押し付けていることだ。CDCが中国から重要な情報を引き出せずに苦労している一方でトランプは、中国の対応を称賛した。報道によるとトランプは、中国との貿易協定の締結を目指している最中に習近平主席のご機嫌を損ねたくないからだという。さらに最近では、政府がCDCからの勧告を無視し、コロナウイルスに感染した14人の患者を非感染者と同じ飛行機で国外から米国へ帰国させた。後から事実を知ったトランプは激怒したという。しかし彼は、感染拡大に対して政府がいかに準備不足であるかを認知できていないとも言われている。

トランプ大統領にとって唯一の頼みの綱は、全て順調であると主張し続けることだ。2月25日朝のインドでの記者会見で大統領は、コロナウイルスはすぐに「消え去る」だろうとし、ワクチンの完成も「間近だ」と主張した。ラマー・アレクサンダー上院議員(共和党・テネシー州)はCNNの取材に対し、ワクチンの開発には「1年〜18ヶ月」かかるだろうとコメントしている。アレクサンダー議員はさらに、上院議員たちは米国内での感染拡大は「避けられない」ものと認識していることを明らかにした。議員の発言内容は、この数時間後に出されたCDCからの警告内容と一致する。

コロナウイルスは大騒ぎするほどのものでないと大統領が必死に主張している裏には、感染拡大に伴う混乱が市場に影響を及ぼし、さらに自身の再選の行方も懸念しているからだ。そしてトランプは「株式市場も私からすれば好調のように見える!」とツイートした。

ワシントンポスト紙も同様の報道をしている。
「トランプ大統領は、政府によるさらなるアクションが経済に影響することへの懸念を募らせている。また大統領顧問らに対しては、これ以上市場を刺激するような政府による行動や発言は控えて欲しいと伝えた。大統領は、大規模な感染拡大が自分の再選に悪影響を及ぼさないかを常に心配している」。

ホワイトハウスは、政府が米国民の福祉に反する活動をすることなどない、と主張している。しかしトランプ大統領による2月25日のコメントやこれまでに政府が直面してきた危機への対応を見る限り、彼の無能さによって被害を被る米国民のことよりも、自身のPRの方を優先しているように見える。トランプの望み通りコロナウイルスがすぐに「消え去って」くれない限り、最悪の状況が待っている。2月25日の午後にCDCが出した警告の通り、現実は深刻な方へ向かっているようだ。

Translated by Smokva Tokyo

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