URC50周年ベストから読み解く、あの頃の若者たちは人生とどう向き合っていたのか

・斎藤哲夫「されど私の人生」



斎藤哲夫さんの「されど私の人生」。この曲は知っているけれども、全然違う演奏スタイルで聴いているっていう方のほうが多いかもしれませんね。吉田拓郎さんがカヴァーしてライブで歌っているものもあるので、拓郎さんの歌だと思ってらっしゃる方も多いでしょう。この曲のオリジナルは71年2月に出たシングルなんですけど、これはヴァージョンが違うんです。この曲はアルバムに入っていなかった。シングルだけだったんですが、1stアルバムの『君は英雄なんかじゃない』が再発をされたときに再発盤用のボーナストラックで入ったんです。URCは69年から70年代半ばまでだったんですが、その後権利者がいろいろ変わっているんですね。発売されているレコード会社も違うんです。今回はポニーキャニオンが発売している。そうやって東芝から出たり、avexから出たりしたときに、再発盤のときのボーナス的な何かということで、それまでアルバムに入っていないものを付け加えてアルバムを出すことも結構あって。このライブverというのも、『君は英雄なんかじゃない』の再発のときに未発表盤として入れられたんですね。今回のこの曲も再発盤ならではの曲ということでお聴きいただきました。

さて、DISC1「人生と暮らしの歌」が16曲目まで来ました。次は最後の曲です。17曲目。こうやって週をまたいでいるので流れとしてはお耳に入ってらっしゃらないと思うんですが、1枚として聴いてくると最後これでほっとするという、そういう締めくくりであります。

・岡林信康「申し訳ないが気分がいい」



DISC1「人生と暮らしの歌」17曲目最後の歌。岡林信康さんの「申し訳ないが気分がいい」。どうしてこんな当たり前のことに今まで気づかなかったのか、という歌で終わっております。DISC1の1曲目が「ゆきどまりのどっちらけ」ではじまったわけで、最後にこれを持ってきたのは、岡林さんの当時悩んでいたことはURC全体のそれぞれの若者が同じような悩みを抱えながら葛藤や模索をしながら生きていたんだなという象徴の意味もあって、岡林さんではじめて岡林さんで終えるという順番にしました。実はこの3枚のアルバム、全部岡林さんで終わっているんです。これは岡林さんに対するリスペクト以外の何ものでもないですね。岡林さんのURCから出ている3枚のアルバムは、音楽に興味を持って歌い始めて、フォークの神様に祭り上げられて、そのためにバッシングもされて、シーンから失踪して、京都の山中に隠遁して、ここに辿りつくまでの時間がアルバムに込められていると思うんですね。最後に「申し訳ないが気分がいい」で終わったのは、そんなに大げさな事ではなく、ここに日本の未来があるのかもしれないなと、どうして当たり前のことに気がつかないんだろうという曲だったからです。一旦ここで終わるんですが、ここからDISC2なので気分を入れ替えて1曲目をお届けします。DISC2のテーマは、「旅と街のうた」。1曲目はこの曲です。友部正人さんで「まちは裸ですわりこんでいる」。

Rolling Stone Japan 編集部

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