音楽業界の救世主となるか? コロナによって勢いを増すライブ配信事業

Shutterstock(ギター)、Getty Images(部屋とパソコン)


「完全にパンク状態です——会社を立ち上げて以来、ここまで注目を浴びた経験はありません」とローウェンスタイン氏は語る。「注目されることはありましたが、今回はまったく異次元です」。

Stageitがアーティストに支払える金額は無尽蔵ではない。だからこそ、同社はブランドに対して一部の費用負担を呼びかけている。ここ数年におけるStageitの通常の月の公演数は75〜125ほどだ。「私ではなく、アーティストたちのおかげです」とローウェンスタイン氏は言う。「事態は収束していませんから、勝利を称えてウィニングランをするような気分にはとてもなれません」。

TwitchやYouNowといったライブ配信プラットーフォームですでに生計を立ててきたアーティストは、新型コロナウイルスの打撃を受けていない少数派と言えるだろう。ポップシンガーのメーガン・レニウスがTwitchとパートナーシップを結んでから3年近くが経つが、ライブ配信はいまでもレニウスにとってミュージシャンとしての主な収入源である。メジャーアーティストがツアーで稼ぐような大金とは言えないものの、レニウスの収入は安定している。ツアー収入に頼るアーティストと異なり、新型コロナのインパクトを受けていないのだ。「オンラインミュージシャンにとっては良い時期です」とレニウスは言う。「ほんとうにそうです。自分の居場所に留まり、あれこれと心配せずに済むのは、とても幸せなことです」。

一部のアーティストにとっても、はやくもライブ配信は中止になったツアーの救済手段となりつつある。イギリスのポップシンガーのエマ・マクガンは、過去5年にわたってオリジナル曲のライブ配信で生計を立て、TwitchやYouNowなどでファンを増やしてきた。

マクガンは、4月から21日間の初の北米ツアーをスタートする予定だった。それが3月上旬に突如延期となったのだ。当初はツアーのおまけとして企画していたバーチャルコンテンツのライブ配信がイベントの主役に変わった。延期になった全北米公演の振替公演として、マクガンはロンドンからコンサートをライブ配信する予定だ。20ポンド(およそ2700円)の「バーチャルツアーパス」の購入者には、全オンラインコンサートへのアクセスだけでなく、グッズ割引などの特典がつく。

「ある程度の収入を見込んでいたと思うわ。だから、中止は経済的な打撃になると思ったの」とマクガンは言う。「でも、予定しているライブ配信によって間違いなく穴埋めができると思う。ほんとうに100%救われた気分」。

有料ライブ配信は、好景気のライブ音楽業界から見下され続けてきたものの、いまでは業界が前に進むための最善策として真剣に検討され始めている。ライブ配信をめぐるミュージシャンのためのハウツー本『Twitch for Musicians: A Step-by-Step Guide to Producing a Livestream, Growing Audience, and Making Money as a Musician on Twitch』(2019年/Tablo Pty Ltd)の著者で技術コンサルタントのカレン・アレンは、いままで受身的な2次元の配信というものは退屈だと思われてきたが、アーティストとファンの交流を促す地域コミュニティに根ざした配信プラットフォームが新たに注目されるようになっている、と米ローリングストーン誌に語った。

「人々は、いかなるオンラインコンテンツに対して金銭を払うことにためらってきました」とアレンは続ける。「コーチェラのライブ配信は最高ですが、そこにお金を払う人はいません。特別だからこそ、コンテンツはオンラインでは無料で提供されるべきだと人々は期待しているのです」。だが、コンサートやライブなどのイベント活動がほぼゼロになってしまった現在、家で静かにじっとしているよりは、どんな選択肢もアーティストとファンにとっては有効だとアレンは指摘する。配信に対して懐疑的だった人々は、そろそろ見解を変えるべきタイミングなのかもしれない。

Translated by Shoko Natori

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