TikTokで流行中の「ホラーみ」あふれる不気味な動画

アートと現実のバランス

別のTikTokユーザー、ブレンデン・カランは、地元ニューヨーク州バッファローの廃工場や劇場などを探検するコンテンツで、7万4000人近くのフォロワーを集めた。キャプションには霊の声が聞こえたと書き込み、1940年代や50年代のヒット曲でさらに不気味さを煽る。「超常現象には強い関心があったので、この手のものを信じる人たち向けに、物語的な要素として盛り込みたかったんです」と彼はローリングストーン誌に語り、動画の撮影場所には「間違いなくミステリアス、あるいは超自然的な雰囲気が漂っています」と付け加えた。その上「大量の再生回数」を稼げるのだ。

Bonnieのコンテンツもそうだが、コメント欄はこれがパフォーマンスアートの延長だと言う人と、現実だと信じる人で意見が二分している。時にクリエーターは正直に事の次第を明かすこともあれば、他の解釈を容認することもある。カランのTikTok動画には“#art”というタグがよく付けられており、彼が創作作品として動画を作っていることが割と明確に示されている。だがどんなに種明かしをしても、信じられないことを信じたがる人間の心理を変えることはできない。カランの元にも頻繁に、彼の身を案ずるコメントが寄せられている。「こういうメッセージはいいねだけ付けて、あとはそのままにしています」と彼は言う。「僕は大丈夫だと思わせておきつつ、無理に現実に引き戻さず、ある意味そのまま妄想の中に浸らせておくんです」

@brendencurran

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♬ Too-Ra-Loo-Ra-Loo-Ra - Bing Crosby


ソーシャルメディアの世界では、こうした凝ったホラー作品は特に目新しくもない、とソーシャルメディア上の奇々怪々なコンテンツを紹介しているユーチューバーReignBotは言う(過去にBonskinnyも取り上げた)。「ほぼ全てのプラットフォームでARG(代替現実ゲーム)や不気味なパフォーマンスアートが出てくるのを見てきました」とReignBotはローリングストーン誌に語り、Twitter、YouTube、Instagramを例に挙げた。こうしたコンテンツが人気急上昇中の話題のアプリ、TikTokにも活動範囲を広げるようになったのはごく最近のことだ。「この手のものはトレンドの流れに従います。次のTikTokのようなアプリが出てくれば、そっちでも不気味なアート作品やARGが流行り出すのは100%間違いありません」

TikTokでは動物の着ぐるみもブームに(写真3点)

だがある意味、TikTokはホラーコンテンツに理想的なプラットフォームと言える。再生時間が短いので、余計な文脈や説明を省くことで不気味な印象を与えることができる。多くを語らない、あるいは全てを見せない方が、動画そのものよりも余計に恐怖を煽るものだ。またTikTokの編集ツールのおかげで、閲覧者が自由に解釈する余地を簡単に残すことができる。不気味なTikTok動画はフィクションと現実の境界を曖昧にすることで、こうした点をうまく活用している。こうした動画の人気は、コメント欄で繰り広げられる「本物か」否かという議論によるところが大きい。

Translated by Akiko Kato

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