メタリカのラーズ・ウルリッヒが選ぶ、最強のメタル/ハードロック・アルバム15作

ブルー・オイスター・カルト『On Your Feet or On Your Knees』(邦題:地獄の咆哮、1975年)


これは史上最高のライブアルバムのひとつだ。曲の大半は『オカルト宣言』に収録されているやつだけど、「シティーズ・オン・フレイム」のような初期のヒット曲や、「ザ・レッド・アンド・ザ・ブラック」のようなマイナーな曲、そして70年代のハードロックバラードの原型というべき「ラスト・デイズ・オブ・メイ」も聴きどころだ。このレコードの凄いところは、濃密でありながら一貫してるところなんだ。

このバンドはメンバー全員が歌えるんだけど、「シティーズ・オン・フレイム」で歌ってるのはドラマーだと思う。ちなみに「ME 262」では、5人のメンバー全員がギターを弾いてて、すごくイカした写真も残ってる。あれぞ究極のギターソロだ(笑)。正規のギタリストは2人だったと思うけど、そこにスティックをギターに持ち替えたドラマーが加わるのさ。

ブルー・オイスター・カルトはニューヨークのシーンの一部だった。CBGBを中心としたダウンタウンのインテリ界隈にいたバンドで、キーボーディストのアレン(・ラニアー)はパティ・スミスと付き合ってたんだ。ルー・リードやヴェルヴェット・アンダーグラウンドを筆頭に、当時のニューヨークのシーンには知的なイメージがあった。あの頃売れてた他の野蛮なバンドに比べると、彼らはスマートで落ち着いていて、どこか凛としてる感じがあったね。





ディープ・パープル『Made in Japan』(1972年)


「ハイウェイ・スター」や「スモーク・オン・ザ・ウォーター」、「スピード・キング」等を例に挙げるまでもなく、ディープ・パープルは数多くの名曲を残してきた。ライブ用に曲をこんなにも劇的にアレンジできるバンドは、彼ら以外にはいないだろう。俺が初めて買ったディープ・パープルのレコードが『ライヴ・イン・ジャパン』で、盤が擦り切れるほど繰り返し聴いた。レコードだとA面からC面までは2曲ずつ収録されてて、D面は20分近くもある「スペース・トラッキン」だけになってる。それから何年かかけて彼らのスタジオアルバムを買い集めていったんだけど、『マシン・ヘッド』を聴いた時は驚いたね。「スペース・トラッキン」は3分くらいしかなくて、残りの17分は一体どこからやってきたんだって感じさ。これぞ探究心ってやつだと思ったね。

このレコードは、メンバー5人がステージで一緒に音を出すことで生まれるケミストリーを見事に捉えてる。ライブ映像を観ると、各メンバーが互いに距離をとって演奏してるのがわかる。ブラックモアがソロを弾き終えるタイミングで右手を上げるのは、次のパートに移れっていうドラマーのイアン・ペイスへの合図なんだ。完全に即興なんだけど、「マッシュルームを4時間ぶっ通しでやる」みたいな、いかにもヒッピー的なトリップ感とは無縁だ。芯の部分は揺るぎないんだけど、ライブでのアレンジが毎回違うから、2つと同じショーは観られない。ソロの長さが何小節になるかなんてことは、弾いてる本人しか知らないんだよ。

このアルバムに収録されてる、1972年8月に行われた大阪での2公演と東京での1公演でのパフォーマンスはすごく特別で、鬼気迫るものを感じさせる。「チャイルド・イン・タイム」のギターソロは、オーネット・コールマンやマイルス・デイヴィスのぶっ飛んだやつを好むような筋金入りのジャズ好きをも唸らせるだろうし、実際にリッチー・ブラックモアとイアン・ペイスのインタープレイはほとんどジャズだ。それでいて、ダウンピッキングでリフをザクザクと刻む「ハイウェイ・スター」なんかは、とてつもないエネルギーに満ちてる。バンドにおける人間関係が良好ではなかったことはよく知られてるけど、メンバーが互いにけしかけて、その挑発に乗ってやると言わんばかりに各自が応戦することで、演奏に痺れるような緊張感が生まれてるんだ。

10年か15年くらい前に出た『ライヴ・イン・ジャパン』っていうアルバムには、その3公演の全編が収録されてる。全部聴いてみれば、「ハイウェイ・スター」「チャイルド・イン・タイム」「スペース・トラッキン」「レイジー」「ストレンジ・カインド・オブ・ウーマン」なんかのギターソロやドラミング、ヴォーカルまでが毎回全然違うことに驚くはずさ。


Translated by Masaaki Yoshida

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