ピンク・フロイド『狂気』知られざる10の真実

7. 「アス・アンド・ゼム」は映画『砂丘』のサウンドトラックへの収録が見送られた曲が元になっている

『狂気』からの2枚目にして最後のシングル(1曲めは「マネー」だった)となった「アス・アンド・ゼム」は、アメリカとカナダでマイナーヒットを記録した。同曲は1969年にライトとウォーターズが書いたピアノとベースのみのインスト曲が元になっており、当初「The Violent Sequence」と題されていた同曲は、ミケランジェロ・アントニオーニによるカウンターカルチャーをテーマとした映画『砂丘』のサウンドトラックのために制作された。イタリア映画界の巨匠は同作に、ピンク・フロイドの「若者の鼓動」「崩れゆく大地」「51号の幻想」の3曲を収録したものの、「The Violent Sequence」は映画に合わないとして採用しなかった。『Classic Albums: The Making of Dark Side of the Moon』でのインタビューで、ウォーターズはこう語っている。「アントニオーニにこう言われたんだ。『美しい曲だが、物悲しすぎる。教会を思わせるんだ』ってね」。それから2年以上が経ってから、バンドは同曲を戦争と貧困をテーマにした感動的な瞑想録へと昇華させた。



8. アルバムのジャケットとして『シルヴァー・サーファー』のイラストが候補に上がっていた

イギリスのグラフィックデザイナーであるジョージ・ハーディが、ヒプノシスのストーム・ソーガソンとオーブリー・パウエルによる助言を得て生み出した、光をマルチカラーへと変えるプリズムを描いた『狂気』のカバーは、音楽史上屈指の名デザインとして知られている。「ストームからいくつかアイディアを見せてもらって、私たちは迷うことなくあれを選んだ」ギルモアは2003年に本誌にそう語っている。「『これしかない』というくらいピンときた。とても美しいカバーだと思う。初見のインパクトだけでなく、商業的な面でも優れたアイディアだと感じたんだ。荒涼としたシンプルなデザインは、店頭でも客の目を引くだろうと思った。どこかの田舎町で野郎4人がはしゃいでいるような写真はまっぴらだったからね」

今となっては他のカバーなど想像もできないが、驚くべきことにヒプノシスが提示した当初のアイディアの中には、コミック『シルヴァー・サーファー』のキャラクターのイラストが含まれていた。「私たちは皆マーベル・コミックスのファンで、シルヴァー・サーファーも大好きだった」パウエルはJohn Harrisとのインタビューでそう語っている。「許可は降りなかっただろうけどね。でも私たちは、全身シルヴァーの男が銀のサーフボードに乗って宇宙を駆け巡るという画が気に入ってた。とても神秘的で好奇心をくすぐられるし、ものすごくコズミックだからね」

Translation by Masaaki Yoshida

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