周囲の人を救うために今できることは? 世界規模で増えるメンタルヘルスへのアクション

また、自殺については、よくある誤解があります。世界保健機関(WHO)編の「自殺対策を推進するために〜映画製作者と舞台・映像関係者に知ってもらいたい基礎知識」の「自殺に関する迷信と事実」から引用します。

迷信:自殺を考えている人と自殺について語ることは望ましくない。自殺を助長するものと捉えられてしまう可能性がある。
事実:世間に広く存在する自殺への偏見により、自殺を考えている人は誰にそのことを話せばいいのか分からない場合が多い。隠し立てせずに自殺について語り合 うことは、自殺関連行動を助長するのではなく、その人に自殺以外の選択肢や 考え直す時間を与えることができる。その結果、自殺の防止につながる。

迷信:自殺について語る人が自ら命を絶つことはない。
事実:自殺について語る人は外に向けて助けや支援を求めているのかもしれない。自殺を考えている人のきわめて多くが不安、うつ、絶望を感じており、自殺 以外に選択肢がないと考えている可能性がある。

迷信:自殺を考えている人は死を決意している。
事実:自殺を考えている人は「生きたい」気持ちと「死にたい」気持ちの間で揺れ動いていることが多い。衝動的に毒物を服用してしまい、本当は生きたかったと思っても数日後に亡くなることもある。正しいタイミングで情緒的支援にアクセスできれば、自殺を防止できる。

迷信:自殺の多くは何の前兆もなしに突然起きる。
事実:自殺のほとんどの事例では、言葉か行動に周囲の人が気づくような兆候が示された。そのため、自殺の兆候とはどのようなものであるかを理解し、注意を払うことが大切である。もちろん兆候がなく自殺が起きる場合もあるが、だからこそ、自殺対策について一般の人々に理解してもらうために情報発信することが非常に重要なのである。

迷信:一度自殺を考えた人は、その後もずっと自殺したいと思い続ける。
事実:自殺リスクが高まるのは一時的であり、その時の状況に依存する場合が多い。自殺念慮が繰り返し起きることはあるかもしれないが、生涯継続するものではなく、過去に自殺念慮や自殺未遂があった人でも、その後の人生を長く生きることは可能である。

迷信:精神疾患のある人だけが自殺を考える。
事実:自殺関連行動は深い悲しみや不幸の表れだが、必ずしも精神疾患があることを示すものではない。精神疾患がある人の多くは自殺関連行動を起こさず、また自ら命を絶つ人すべてに精神疾患があるというわけでもない。

迷信:自殺関連行動は容易に説明することができる。
事実:人を自殺に追い込む要因は多様かつ複雑である場合が多く、単純化して伝えるべきではない。自殺関連行動を理解するには、保健、精神保健、ストレスを感じるような人生の出来事、社会的・文化的要因を考慮する必要がある。衝動性も大きな要因である。

迷信:自殺は困難な問題に対処するための適した手段である。
事実:自殺は問題対処の建設的または適切な手段でもなければ、深刻なうつ状態への対応や苦しい生活状況に対処する唯一の方法でもない。自殺念慮を抱きながらも苦しい生活状況に上手く対処できた人の体験談は、現在自殺関連行動を考えている可能性のある人に対して、実行できる他の選択肢を示すことにつながる。

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