ピエール中野と手島将彦が語る、現在の音楽業界に必要なメンタルヘルス

左から、手島将彦、ピエール中野(凛として時雨)

近年、心の病に苦しむアーティストが急増している。Music Industry Research Associationが2018年に発表した研究報告によると、鬱の症状を経験する成人の数が全体の25パーセント以下であるのに対し、ミュージシャンの場合はその数が2人に1人の割合になるという。その必要性から「アーティストのメンタルケア」が海外を中心に注目を集めている。

メンタルヘルスの問題を抱えるミュージシャンとその周辺にいる人々に必要なサポートを提供する団体を紹介することを目的としたBacklineという組織や、24時間電話またはオンラインでセラピストの診断を受けられるサービスを提供する非営利団体Tour SupportをLive Nationが支援する旨を正式に発表するなどの動きに加え、アーティストの働き方にも変化が見えている。2019年には、9時にスタジオに来て、13時に昼休憩を取り、17時ぴったりにスタジオを去るエミネムの音楽への仕事としての向かい合い方が話題になった。創作の辛さや心の悲痛な叫びを作品に昇華することを美徳とする時代は、前時代的な考えになりつつある。その陰で数多くのアーティストが犠牲になってきていたのだ。

日本では2019年、音楽学校教師で産業カウンセラーの手島将彦が、書籍『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』を上梓。洋邦問わず、ミュージシャンたちのエピソードをもとに、カウンセリングやメンタルヘルスに関しての基本を記し、アーティストやその周りのスタッフが活動しやすい環境を作るべきであると1冊を通して示した。

また、バンド「凛として時雨」のドラマーであり、DJ やコラム連載、イヤホンの開発など幅広く精力的な活動を展開しているピエール中野。自身のTwitterアカウントでDMを開放し、ファンの悩みを吐き出せる場を提供する他、Instagram上ではフォロワーからの質問や悩み相談に回答し続け、その多くの回答数でストーリーズのタイムバーが細かくなり、キリトリ線に見えることから2019年7月には書籍『キリトリ線」を刊行。そして、3月1日には第2弾となる書籍『Instagramストーリーズ #キリトリ線2 ~人生の視野を広げるための思考の転換~』を出版した。

新型コロナウィルスによりライブや音楽活動の自粛が求められている中、音楽業界の渦中にいる手島将彦とピエール中野に、メンタルヘルスの必要性について、Zoomを通して対談形式で語ってもらった。

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