追悼エディ・ヴァン・ヘイレン、未公開インタビュー「俺に影響を与えたのはクラプトンだけ」

「俺に影響を与えたのはクラプトンだけ」とギターヒーローに関する2011年のインタビューでヴァン・ヘイレンは語った。(Photo by Martin Philbey/Redferns/Getty Images)

現地時間10月6日に亡くなったエディ・ヴァン・ヘイレンを追悼。2011年のローリングストーン誌インタビューの未公開部分を含めたフルバーションを掲載する。ギタリストとして成長する過程で受けた数々の影響について語ってくれた。

2011年11月、本誌が史上最高のギタリスト・トップ100のランキング記事の準備に取り掛かっていた最中に軽い会話をしようとエディ・ヴァン・ヘイレンが電話をかけてきた。本インタビューのなかで2020年10月6日にがんでこの世を去ったヴァン・ヘイレン(享年65歳)は、お気に入りのギターヒーロー(ナンバーワンはエリック・クラプトン)や自身のギタースタイルの起源など、ありとあらゆるテーマについて語った。今回は、インタビューのフルバージョンを初めて掲載する。

ー早起きですね。

俺はいつも早起きだよ。毎朝5時から7時のあいだに起床して、ワークアウトするんだ。かなり前からこの生活さ。

ーということは、昨夜(ギタリスト・トップ100に)投票してくれたんですね。

そうだよ。というか、まあ、努力はした。だって、俺にはどうもイマイチわからないんだ……(最高のギタリストの)定義ってなんだ? というのも、俺自身はもちろん、他のギタリストを個人的に評価したことなんてないから。オリンピックとか競争とは違うんだ。わかるかな?

そうだ、こうしてみよう。ベートーヴェン、モーツァルト、チャイコフスキー、ショパンの時代にどうやって彼らを評価しろっていうんだ? 彼らは、それぞれの方法で優れていたし、彼らをランク付するなんて不可能だ。

ー言いたいことはわかります。

だから、こうした投票とか、歴史上もっとも偉大な人物は誰だ? とかの意味を理解できたことがないんだ。でも、君たちがそういうアプローチを取るなら、これはあくまで俺の視点だけど、まずはエレクトリック・ギターを発明してくれたレス・ポールとレオ・フェンダーから始めないといけないな。だって、彼らがいなかったら、弾くべきギターがそもそも存在しなかったから。ギタリストであり、革新者であったことを踏まえると、やっぱりナンバーワンはレス・ポールだな。レオ・フェンダーは、かならずしもギタリストではなかったけど、彼の周りにはいつもギタリストたちがいて、彼はエレクトリック・ギターを生み出した。そこで登場したのがエリック・クラプトンだ。クラプトンは、俺のランキングではナンバーワンだよ。クラプトンの演奏スタイルと雰囲気に魅了された点は、彼のアプローチの根底のシンプルさと、彼のトーンとサウンドにあるんだ。

言ってしまえば、クラプトンはただギブソンのエレクトリック・ギターを抱えてマーシャルのアンプに直で差し込んだ。それだけのことさ。基礎やブルース……後は、君も知ってのとおりだ。俺はレス・ポールもフェンダーどちらも好きじゃなかったから、2つを交配させた——それぞれの最良の部分を取って、独自のギターを開発したんだ。基本的には、俺に影響を与えたのはクラプトンだけだ。それもクリーム時代のクラプトン。クリームが解散した頃には、習得したことをベースに自分なりの方法で走っていた気がする。

ークラプトンの音楽に初めて触れたときのことを覚えていますか? 当時、クリーム以前の作品は聴いていたのですか?

実のところ、クリームを聴きはじめた後にザ・ブルースブレイカーズ的なものを若干振り返って聴いたんだ。でも、俺がいちばん好きなのはクラプトンがクリームにいた頃だ。それもたった2〜3年なんだけど。期間的には決して長くはないけど、『クリームの素晴らしき世界』や『グッバイ・クリーム』みたいなライブっぽいのが大好きだった。それぞれのメンバーが楽器を弾くことで全体の雰囲気を作っているのが実感できるから。

【関連記事】エリック・クラプトンが愛用してきたギターの系譜

ー実際、こうしたレコードをスロー再生にして、全フレーズを覚えたんですね。


そうさ、ターンテーブルを使ってやってたよ。基本的には、すべてのベースはブルースだ……最高に美しいスリーコードと自由に使える12音がある。極めてベーシックだ。当然、クラプトン時代にはジミー・ペイジ、(ジミ・)ヘンドリックス、(ジェフ・)ベック、タウンゼントといったギタリストもいた……リズム・ギタリストとして影響を受けたのはピート・タウンゼントだ。結局は、ヘンドリックスまでたどり着かなかった。レコードだって1枚も買ったことないんじゃないかな。ヘンドリックスのアプローチはどちらかというと抽象的だった。

ー子どもの頃、ヘンドリックスのワウワウという音や、他のペダルを使って出している音を再現する方法がわからなかったと言っていたのを覚えています。

まさにそのとおり。第一に、あんなバカ高い機材なんて買えなかった。だから、俺にとってはクラプトンがほぼすべてさ。

ーあなたの演奏からはクラプトンの影響が感じられないと言う人もなかにはいます。言われるまでクラプトンから影響を受けたとはわからないようです。

まあ、クリームの後は変わったからな。ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの「I Shot The Sheriff」をカバーしたり、デラニー&ボニーとつるみ始めたりした頃からクラプトンのスタイルはすっかり変わった。少なくとも、サウンドは変わった。たとえば、『グッバイ・クリーム』の「I’m So Glad」みたいなライブ音源を聴けば、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカー、クラプトンの3人が本当に最高のサウンドを生み出しているのが実感できる。というのも、クラプトンは2人のジャズマンに支えられていたから。かなり昔にクラプトンが「当時は自分がいったい何をしているか、まったくわからなかった」と言っていた記事を実際目にしたことがあるよ。クラプトンはどうにかして2人に遅れないようにしていたんだ。

でも、考えてみると不思議だ。というのも、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ時代の楽曲をさかのぼって聴いていたときにピーター・グリーンを発掘したんだ。実のところ、彼はクラプトン本人よりクラプトンらしかった。グリーンのほうが滑らかで、もっと旨味があった。わかるだろ? その後、グリーンがどうなったかは知らないけど……

ーメンタルヘルスに問題を抱えていたようです。

らしいね。俺たちはみんな、エレクトリック・ギターを弾いているせいで若干クレイジーなんだと思う。何はともあれ、今回の投票はかなり難航してるよ。

Translated by Shoko Natori

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