エルトン・ジョンも魅了したTikTok発の新星、サーフェシズが世界中から愛される理由

「Sunday Best」の成功とポジティブな光

2017年、当時大学生だったコリン・パダレッキはSoundCloudで自作曲を発表しており、それを聴いたフォレスト・フランクが彼に声をかけて意気投合した、というのがサーフェシズのオリジンストーリーだ。同年に早速リリースしたデビューアルバム『Surf』から「24 / 7 / 365」がSpotifyでヒットしたことで、バンドの名はすぐに知られるようになった。



「24 / 7 / 365」には、サーフェシズらしさがすでに凝縮されている。ボサノバのクラシック「イパネマの娘」を大胆にサンプリングしているところがまずキャッチーだし(「イパネマの娘」風のメロディは、『Sunday Best』の収録曲「Good Day」にも登場する)、フォレストのゆったりとしたボーカルにコリンのいとこであるアレクサの歌声が優しく重なり合っていくのも心地いい。そして、楽曲を律しているローファイヒップホップ風のビートと、ざらっとした質感のサウンドプロダクションは、聴き手に寄り添うようなチルなムードだ。

2019年1月には2ndアルバム『Where the Light Is』を発表、そこには運命の一曲「Sunday Best」が収録されている。



「Sunday Best」がどうやってTikTokで広がっていたのかについては、松島功氏によるマーケティングの観点からの解説にくわしい。簡単にまとめると、リリースから1年弱経った2019年12月、TikTokの「#2019rewind」という1年間の振り返り動画で使用されたことで「Sunday Best」は爆発的に広がっていった。2020年に入るとダンスチャレンジの定番曲になり、ジャスティン・ビーバーが参加(生き物のように変化していくヒットの過程も実にTikTok的)、「Sunday Best」はリリースから1年半を経て、今年7月にBillboard Hot 100で19位にまで上昇している。さらに「Sunday Best」にとどまらず、サーフェシズの楽曲が至る所で使用され、BTSのVやマリア・シャラポワといったセレブたちがTwitterやInstagramなど他のソーシャルメディアに楽曲を投稿している。

@justinbieber

♬ Sunday Best by Surfaces - rapidsongs




「Sunday Best」がこれほどまでに大きな広がりを見せたのは、もちろんサーフェシズの音楽そのものに理由がある。メロディは滑らかだけれども一度聞いたら忘れられないフロウをもっているし、ピアノとギターとサブベースが絡まり合ったリズムは心地よく、音の抜き差しを効果的につかったメリハリのある構成やプロダクションはドラマティック。パーカッションやボイスサンプルの挿入は、サウンド全体に軽快さを与えている。

もっと重要なのはポジティブなリリックで、「Sunday Best」がひとびとの心をつかんだ理由も、この歌詞によるところが大きかったはず。“いい気分、こうでなくちゃ(Feeling good, like I should)”というこの曲のいちばん有名なラインは、コロナ禍に見舞われた世界で前向きな「feeling」を取り戻すきっかけを与えてくれるもの。外出や対面でのコミュニケーションが困難になった今、鬱屈とした生活の中で“近所をちょっと散歩してみた(Went and took a walk around the neighborhood)”ことがいかに大事なことか(ちなみに、「Sunday Best」を収録した2ndアルバムのタイトルは「光があるところ(Where the Light Is)」)。

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