1000億ドル超えも間近? ユニバーサル・ミュージック・グループの企業価値とは?

財務バランスの観点からは、UMGの現在の評価額に対してもっと弱気な見方もある。同社のリスク要因をいくつか検証してみよう。

1. ひとえにボリュームという理由から、DIYアーティストという新興セクターがストリーミング市場全体において大手レコード会社3社が占めるシェアを徐々に削り取っている。こうした動きに加えてSpotifyをはじめとするストリーミングサービス各社は、大手よりも地元のインディー系レーベルが強い国や地域へとサービスを拡大させている。YouTubeで圧倒的なフォロワー数を誇るインド発の音楽チャンネル「Tシリーズ」はそのひとつだ。そう考えると、ブラジルの最大手レコード会社Som Livreがおよそ3億ドル(約330億円)で売りに出ていると聞いても納得できる。大手音楽企業が同社を突然買収したからといって、驚いてはいけない。

2. 現在UMG傘下のレコード会社は、テイラー・スウィフトをはじめとする超大物アーティストとかつてないほど寛大な条件の契約を結びはじめている。サービス方式の契約であれ、短期的なライセンス契約であれ、こうした取引によって数年後にアーティストが自作楽曲の著作権を完全に掌握する可能性がある。その間、ロイヤリティの50%以上が彼らに支払われる。ありがたいことに、過去に大手とアーティストとの間で交わされたケチな「永代」契約は、過ぎし日の遺産となりつつある。そしてこの動きは、今後のUMG側の利益に影響を与える可能性が大きい。

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3. アーティスト/作曲家が最近の音楽出版社と交わした契約は、わりと定期的に満期を迎えている。それに加えて、ベテランの作曲家の場合、米国では楽曲が公開された日(著作権が成立した日)から56年目に楽曲の権利を取り戻すことができる(数年前のポール・マッカートニーとソニー/ATVミュージックパブリッシングの法廷バトルを思い出してほしい)。こうした傾向は、より多くの著作権が大手音楽企業の手を離れ、Hipgnosis Songs FundやPrimary Waveといった潤沢な資金を持つスタートアップ企業にわたることを意味する。先日UMGは、ボブ・ディランの自作楽曲を最大4億ドル(約440億円)と推定される金額で取得し、こうした流れが現実であることを身をもって示した。

Translated by Shoko Natori

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