1000億ドル超えも間近? ユニバーサル・ミュージック・グループの企業価値とは?

したがって、音楽業界におけるUMGの圧倒的な権力(世界市場におけるレコード音楽収益のシェアの30%以上を占める)と同社が所有する無敵の楽曲カタログは、最終的な評価額と、今後のスピンオフに向けて投資家の信頼を勝ち取る重要な推進力となるだろう。

この点について、先日筆者は財政専門のあるベテラン業界関係者からいくつかの概算数値を入手した。それらの数値は、UMGの企業価値が今後数年のうちに1000億ドル(約11兆円)を超えるかもしれないという見方にさらなる信憑性をもたらすものだった。そしてすべては、現在518億ドル(約5兆円)のSpotifyの時価総額にかかっているという。

その人物は「Spotifyの投資家たちが(その時価総額)に対して7%という普通配当を期待するのであれば、同社が36億ドル(約3990億円)の年間収益を上げていると考えるでしょう。年間コストがおよそ20億ドル(約2200億円)と言われている同社は、損益を出さないようにギリギリのところで稼働しています。Spotifyがコストを増やすことなく成長できると仮定すると、36億ドルの収益を上げるには、56億ドル(約6200億円)の粗利益を生み出さなければいけません」

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「25%という売上総利益率で56億ドルの粗利益を実現するには、224億ドル(約2兆円)という年間収益を上げる必要があり、これによって音楽業界には116億ドル(約1兆円)が入ります。これは、Spotifyが大手レコード会社に支払う純収入のシェアの52%という数値にもとづいています」

彼はこのように続ける。「そこで、Spotifyが市場で35%ほどのシェアを占めていると仮定しましょう。つじつまを合わせるには、音楽ストリーミング市場が毎年音楽業界に支払う金額は331億ドル(約3兆円)に達していなければいけません。ですが、2019年に世界中の音楽業界がストリーミングから得た金額は114億ドル(約1兆円)です。Spotifyの現在の評価額は、音楽業界のストリーミング収益が今後3倍に伸びることを示しているのです」

UMGのみならず、潜在投資家たちにとっては、またとない朗報だ。


著者のティム・インガムは、Music Business Worldwideの創業者兼発行人。2015年の創業以来、世界の音楽業界の最新ニュース、データ分析、雇用情報などを提供している。ローリングストーン誌に毎週コラムを連載中。

From Rolling Stone US

Translated by Shoko Natori

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